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生命保険等については、将来の不測の事態に備えることが第一義目的となりますが、法人が生命保険を活用することで、結果的に節税につながるケースがあります。
ただし、最近の流れとして、行き過ぎた租税回避を防止する観点から、保険に関する税制が改正され、支払時に一括で損金算入できる保険は、ほとんどなくなりつつあります。
 
そこで今回は、現時点で改正の影響を受けないものとして「貯蓄性があり、かつ一定額の損金算入が可能」な「養老保険」の会計処理、福利厚生費等で認められる要件につき解説します。

 

1. 養老保険とは?

養老保険は、法人等が保険料を負担し、被保険者を「全役員・全従業員」とした保険となります。被保険者が亡くなった場合は死亡保険金が支払われ、満期まで生存していた場合は満期保険金が支払われる生命保険です(「被保険者」 = 保険の対象者のこと)。

したがって、死亡保険金等の保障を確保しながら、貯蓄性も備わっている点が「養老保険」の特徴となります。特徴をまとめると、以下の通りです。

  • 保障期間内に死亡した場合、「死亡保険金」が受け取れる。
  • 何事もなく保障期間が終了した場合は、「満期保険金」が受け取れる。
  • 解約時には、「解約返戻金」が受け取れる。
  • 保険期間は、「終身ではなく有期」で決められている。

 
なお、解約返戻金については、早い時期に返戻率が90%程度に達します。また、死亡保険金と満期保険金は同額、満期までの支払保険料総額よりも若干高く設定されている商品が多いです。

 

2. 養老保険のパターンと税務上の取扱い

被保険者は役員、従業員、支払者は事業主となりますが、「保険金の受取人」を誰にするか?で、以下の4つのパターンに分かれます(法人税基本通達9-3-4)。
 

パターン 保険金受取人 目的 税務上の取り扱い
死亡保険金 満期保険金
(1) 会社 会社 事業保証 + 退職金目的 全額を資産計上
(2) 役員・従業員の遺族 役員・従業員 福利厚生目的 役員報酬or給与(※1)
(3) 役員・従業員の遺族 会社 事業保証 + 福利厚生目的 1/2福利厚生費(死亡保険金)(※2)
1/2資産計上(満期保険金)
(4) 会社 役員・従業員 ???? 明文規定なし

 
(※1)この場合、個人側が必ず保険金を受け取るため、税務上は、福利厚生費ではなく、役員報酬 or 給与となります。個人側は支払った金額につき毎年の「生命保険料控除」の対象となります。
(※2)福利厚生費にするには、一定の要件を満たす必要があります(下記4参照)
 
なお、上記のうち、パターン④は、保険商品としての合理性に欠けるため、税務上は否認される恐れがあります。したがって、今回は①~③に限定してまとめます。
 

3. 養老保険の仕訳

パターンごとに、税務上の仕訳をまとめると、以下のようになります。

 

(1)  死亡保険金・満期保険金とも「会社」が受け取る場合

 

借方 貸方
保険料支払時 保険積立金(※1) 10,000 預金 10,000
満期保険金( 解約返戻金)受取時 預金 2,500,000 保険積立金 2,200,000
雑収入(※2) 300,000
死亡保険金受取時 満期保険金受取時と同様

 
(※1)全額資産計上。傷害特約などの特約部分の保険料は、経費計上できます。
(※2)「保険積立金」残高と、受取保険金の差額は「雑収入」(or「雑損失」)として、益金(損金)に算入されます。


 

(2)  死亡保険金、満期保険金とも「従業員等( or 遺族)」が受け取る場合

 

借方 貸方
保険料支払時 役員報酬 or 給料(※1) 10,000 預金 10,000
満期保険金( 解約返戻金)受取時 仕訳なし(※2)
死亡保険金受取時 仕訳なし(※3)

 
(※1)全額給与等として経費計上。役員の場合は、定期同額給与の規制を受けます。個人側は、所得税課税対象となります。
(※2)会社側の処理は不要ですが、従業員側は、保険金は一時所得( or 雑所得)として、所得税課税対象となります。(詳しくは、コチラをご参照ください。)
(※3)所得税は非課税ですが、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

 

(3)  死亡保険金は従業員等の遺族、満期保険金は会社が受け取る場合

 

借方 貸方
保険料支払時 保険積立金(※1) 5,000 預金 10,000
福利厚生費(※1) 5,000
満期保険金( 解約返戻金)受取時 預金 2,500,000 保険積立金 1,100,000
雑収入(※2) 1,400,000
死亡保険金受取時 雑損失(※3) 1,100,000 保険積立金 1,100,000

 
(※1)半分資産、半分損金となります。福利厚生費にするためには、一定の要件を満たす必要があります(下記4参照)
(※2)「保険積立金」残高と、受取保険金の差額は「雑収入」(or「雑損失」)として、益金(損金)に算入されます。
(※3)死亡保険金は役員・従業員の遺族に直接支払われますので、会社側は「保険積立金」を取り崩し、同額を「雑損失」に計上します。なお、個人側については、パターン2と同様、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。


 

4. 福利厚生費にするための要件

実務上は、退職金原資を確保する目的で、パターン3(半分損金)の契約形態が多いかと思います。保険料の1/2を「福利厚生費」処理するためには、原則として「全役員・全従業員」を保険の対象者にすることが必要となります(特定の者だけを対象としている場合は、給与扱い。パート社員・アルバイトの方は含まれません)。

年齢・勤続年数等の基準で加入対象者の限定は? 合理的な理由があれば認められるケースはあります。ただし、例えば課長以上など「役職」による限定は、全員が課長になれない可能性が高いため、認められません。役職ごとに支払金額を変えるのも、基本的には×です。
新規入社や退職者の取扱いは? 福利厚生費としての要件を備えるため、新規入社の方は、入社後に加入、退職者は退職時に解約する必要があります。
加入できない従業員がいる場合 持病等で保険に加入できない従業員がいる場合、例えば、他の商品で同様の福利厚生の恩恵を受ける整備が必要です。

また、「福利厚生規定等」を整備のうえ、保険金額や退職時の取扱い等を明記し、福利厚生の一環としての保険であることを明確にしておくことが必要です。

 

5. マイクロ法人や、大部分が同族関係者の場合は?

例えば、一人社長や家族社員のみで構成される会社の場合は、福利厚生費として認められません。

    <所得税法 基本通達36-31>
     役員又は使用人の全部又は大部分が同族関係者である法人については、たとえその役員又は使用人の全部を対象として保険に加入する場合であっても、その同族関係者である役員又は使用人に関しては、支払保険料の2分の1に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等とする。

 

「大部分」かどうかの判断基準として、実務上は、概ね8割以上を同族関係者が占める場合で判断されているケースが多いようです。

給与課税となる場合は、法人側は源泉徴収が必要となり、個人側には所得税が課税されます。役員の場合は「定期同額給与」を超えるため、役員報酬損金不算入となります(法基通9-2-11)。

なお、生命保険は、社会保険上の「現物給与」には該当しませんので、給与認定された場合でも社会保険料の対象とはなりません。
 

6. 参照URL

(国税庁 「養老保険の保険料の取り扱い」)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5363.htm

 

7. YouTube

 
YouTubeで分かる「養老保険の損金算入パターン」
 

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