No45.【わかりやすく】特定資産の譲渡等損失額の損金算入制限とは?対象となる資産は帳簿価額等が1000万円以上の資産?
適格組織再編成等の場合、資産や負債は、原則として、税務上の簿価で移転となるため、移転する資産に含み損がある場合は、当該資産の含み損も、移転を受けた法人に引継がれます。
この結果、多額の含み損を持っている資産を無税で移転し、その後、受入側の会社が売却することで、「繰越欠損金を引継ぐことと同様」の租税回避行為が行われる可能性があります。
そこで、繰越欠損金の制限と同様の趣旨で、グループ内での適格組織再編成等の場合、含み損を有する一定の資産の譲渡等における損失の計上につき、制限が課せられます。
「特定資産の譲渡等損失の損金算入制限」と呼ばれます。
1.該当するケースは?
グループ内での「適格組織再編成等(みなし共同事業要件を満たす場合は除く)で、その後、支配関係が生じて5年内に行った「特定資産の譲渡等損失」は、損金の額に算入されません(法62条の7)。
適格組織再編成等とは、適格合併、非適格合併でグループ法人税制適用対象、適格分割、適格現物出資、適格現物分配を指します。
【(※)支配関係とは(法2条12号の7の5、6)】
いずれか一方の法人が、他方の法人の発行済株式の総数等の50%超を直接(or間接)保有する関係
二つの法人が同一の者によって、各々法人の発行済株式の総数等の50%超を直接(or間接)に保有される関係。
なお、特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入(法人税法60条の3)の規定が適用される場合は、当該60条の3の規定が優先されます。
1.「特定資産」とは?
(1) 特定資産は2種類
特定資産とは、「特定引継資産」と「特定保有資産」の2種類となります(法57④、62の7①、令112③⑩、123の8①)。
① | 特定引継資産 | 被合併法人等から適格組織再編成等により移転を受けた資産で、支配関係発生日前から(被合併会社等で)保有していた資産 |
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② | 特定保有資産 | 合併会社等で、元々支配関係発生日の属する事業年度開始日前から保有していた資産 |
特定資産は、例えば、適格合併を例にすると、被合併会社が保有する資産だけではなく、合併会社が保有する資産も対象となる点に注意が必要です。
(2) 特定資産から除外される資産
ただし、以下の資産は除かれます(法令123の8③⑬)。
- 棚卸資産(土地等を除く)
- 短期売買商品、売買目的有価証券
- 適格組織再編成等の日における帳簿価額または取得価額が1,000万円に満たない資産
- 支配関係発生日における価額(時価)が、法人税法上の帳簿価額以上である資産(申告書に明細添付)
- 非適格合併により移転を受けた資産で、譲渡損益調整資産以外のもの
2.損金算入制限期間
特定資産の譲渡等損失につき、損金算入が制限される期間は、下記のうち、どちらか早い方です(法法62条の7第1項)。
損金算入が制限される期間が設定されていますので、譲渡等の時期をずらすことができれば、損金不算入額を調整することも可能です。
① | 「適格組織再編成等が行われた事業年度開始日」から3年を経過する日 |
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② | 「支配関係発生日」から5年を経過する日 |
3.損金算入制限される金額
損金不算入(加算・社外流出)の対象となる「特定資産譲渡等損失額」は、事業年度ごとに計算した特定資産に係る譲渡等の損失額から、特定資産の譲渡または評価替えによる利益の額を控除した金額となります(法法62条の7第2項、法令123の8)。
(特定引継資産から生じた譲渡等損失 - 特定引継資産から生じた譲渡等利益) + (特定保有資産から生じた譲渡等損失 - 特定保有資産から生じた譲渡等利益)
4.特定資産の譲渡等損失額の特例計算
支配関係事業年度の前事業年度終了時における時価・簿価等との比較により計算できる特例があります。