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「剰余金の配当」とは、貸借対照表の純資産の「剰余金」を原資に、株主に配当を行うことです。
「剰余金」には、「利益剰余金」と「資本剰余金」の2種類があります。

配当を行う際には、会社法上、「利益準備金」や「資本準備金」への積立が強制されます。
また、配当の際には、一定の源泉徴収が必要な場合もあります。

今回は、配当可能な剰余金の種類や、配当にかかる「会計処理」「申告書の記載方法」をまとめます。

なお、剰余金の配当は、現金配当だけでなく、「現物分配」つまり「金銭以外の資産」の配当も含みます。
 

1.剰余金の種類と配当可能な剰余金

 

(1)剰余金の種類

貸借対照表の「純資産の部」のうち、資本金以外の部分は「剰余金」と呼ばれます。
剰余金は、大きく、「資本剰余金」と「利益剰余金」の2種類となります。

資本剰余金 資本取引から生じる剰余金です。①資本準備金②その他資本剰余金(自己株式処分損益、減資差益等)から構成されます。
利益剰余金 損益取引から生じる剰余金です。①利益準備金②その他利益剰余金(任意積立金、繰越利益)から構成されます。

 

(2)配当可能な剰余金

剰余金のうち、資本準備金、利益準備金は配当ができません。配当が可能なのは、その他資本剰余金、その他利益剰余金となります。ただし、剰余金の配当は、会社財産の流出を伴いますので、債権者等が不測の損害を被らないよう、会社法上、剰余金の分配可能額の制限が設けられています。
自己株式の取得の際も、同様の規制があります。
 

2.利益準備金・資本準備金の積立

剰余金の配当を行う場合、配当額の10%を利益準備金(配当原資が資本剰余金の場合は、資本準備金)として積立する必要があります(会445条4)。「資本準備金と利益準備金合計額」が資本金の1/4に達するまで強制されます(計規22条2①)。なお、1/4を超えて積み立てる分には何の問題もありません。
 

3.源泉徴収

配当を行う場合は、源泉徴収が必要となります。
源泉徴収税率は、非上場株式の場合は、配当額の20.42%となります(上場株式の場合は、地方税合わせて20.315%)。

なお、令和4年の税制改正により、100%子会社や、1/3超保有会社からの配当については、令和5年10月1日以後の配当より、源泉徴収が不要となりました。この配当には「みなし配当」も含まれます。
 

4.剰余金配当の仕訳

剰余金を配当する場合は、原則として「株主総会決議」が必要です。配当はいつでも行うことができますが、その都度「株主総会決議」が必要となります。

剰余金の配当は、「配当決議日」に剰余金を取り崩す会計処理を行います。
現金配当を前提に、具体例を用いて、会計処理を記載します。
 

(1)具体例

    ●株主に、「利益剰余金」からの配当50,000を行った。
    ●上記配当の10%を利益準備金で積み立てるものとする(資本金の1/4には達していない)。
    ●未上場会社(源泉税率20.42%)とし、子会社、1/3超保有会社への配当ではないものとする。

 

借方 貸方
配当決議日 繰越利益剰余金(※1) 55,000 未払配当金
利益準備金(※2)
50,000
5,000
配当支払日 未払配当金 50,000 現金
預り金(※3)
39,790
10,210

(※1)その他資本剰余金からの配当の場合は、「その他資本剰余金」となります。
(※2)その他資本剰余金からの配当の場合は、「資本準備金」となります。
(※3)配当にかかる源泉所得税部分(20.42%)です。
(※4)その他資本剰余金からの配当の場合は、みなし配当の論点があります。当該論点はQ102をご参照ください。
 

(2)ご参考~配当を受ける側の会計処理

借方 貸方
配当受領日 現金
仮払金(※1)
39,790
10,210
受取配当金(※2) 50,000

(※1)配当にかかる源泉所得税部分(20.42%)です。
(※2)その他資本剰余金の配当の場合は、受取配当金ではなく「その他有価証券」となります。詳しくは、No178をご参照ください。

 

5.配当の申告書記載例

上記例題を前提に、法人税確定申告書の記載例をご紹介します。
 

(1)税務処理

「会計処理」と「税務処理」で差異はありませんので、申告書上の税務調整(加減算)はありません。
 

(2)申告書の記載

税務調整はありませんが、配当が社外流出する点と、利益準備金の積立処理がありますので、以下の記載となります(配当以外の加減算なし、期首 繰越利益ゼロとします)。
 

(別表4 所得の金額の計算に関する明細書)

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益 1,000,000 950,000 配当 50,000
その他 ・・
加算 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
減算 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
所得金額 ・・ 1,000,000 950,000 50,000

当期利益の右側「社外流出欄」に「配当」というタイトルで記載します。
 

(別表5 利益積立金の計算に関する明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金 5,000 5,000
・・・
利益積立金
繰越損益金 5,000 950,000 945,000

 
なお、その他資本剰余金からの配当の場合は、税務上は、「資本金等の額」からの減少分と、「利益積立金」からの減少額がありますので、「みなし配当」が発生します。こちらについては、配当する側は、No155、配当を受ける方は、No178で、別表の具体例を記載しています。こちらをご参考ください。
 

6.配当の支払調書

(1)配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書

剰余金の分配を行った場合、配当ごとに「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」を作成し、税務署へ提出します。当該支払調書は、配当金を受け取る方にも交付します。

ただし、以下の場合は税務署へ提出する必要はありません。

  • 1回に支払う金額が3万円以下
  • 源泉徴収の対象とならない等、一定の規定が適用されるもの
  • 非上場会社の年1回の配当支払で、10万円以下のもの

 

(2)配当、剰余金の分配、金銭の分配 及び基金利息の支払調書合計表

配当金や剰余金などの支払確定日(または支払日)から1ヶ月以内に、「配当、剰余金の分配、金銭の分配 及び基金利息の支払調書合計表」に添付して税務署へ提出します。

 

7.参照URL

配当金を受け取ったとき(配当所得)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
 

配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書(同合計表)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100023.htm
 

8.Youtube

 
YouTubeで分かる「剰余金配当の会計処理」
 

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