No149.長期平準定期保険って何?
長期平準定期保険は、「定期保険」の一種です。
満期保険金がない「掛け捨て」の保険ではありますが、「一定期間」解約返戻金があるため、法人の節税の観点でよく利用されている商品ですね。
また、非常に長い保険期間が設定されていて、「95歳満期」や「100歳満期」といった保険期間が一般的です。
1. 返戻金のイメージ
保険期間中に支払う保険料は、一定額です。
一方、解約返戻金については、保険期間が進むにつれ徐々に増加し、一時点でピークを迎えます。
その後は急激に減少し、最終的に解約返戻金は0となります。
イメージはこんな感じです。
(イメージ図)
2. 長期平準定期保険のメリット・デメリット
メリットデメリットをまとめると、以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
税務上の要件を満たす場合は、損金算入できるため、法人の「節税商品」として活用されています。
ただし、解約時に生じる「解約返戻金」には「税金」がかかりますので、単に「課税の繰延」を行っているにすぎません。
ですので、解約に合わせて、役員等への退職金を支給するなど、出口の税金対策をセットで考えておかないと、意味がありません。
一般的には、役員や従業員の「退職金準備」として利用される場合が多いですね。
3. 税務上の長期平準定期保険の要件
税法上の要件を満たす「長期平準定期保険」は、以下を全て満たす必要があります。
① 法人が契約者・受取人、役員又は使用人を被保険者とした定期保険
② 保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳を超える
③ 保険加入時の被保険者の年齢+(保険期間×2)>105(※)
④ 逓増定期保険に該当しない
40+(40×2)=120>105 OK
なお、似たような保険で、「逓増定期保険」という商品もあります。
こちらは、保険期間満了までに、「死亡保険金額」が、「契約当初金額から5倍」まで増加する定期保険です。
こちらも、「掛け捨て」ではありますが、「解約返戻率が高い」点で、同様のメリットがあります。
4. 損金計上のタイミング
長期平準定期保険は、毎回支払う保険料が「平準化」されているため(=定額)、保険期間前半に支払う保険料には、将来期間に対応する「前払保険料」が含まれています。
そこで、税務上は、損金算入時期につき、以下の制約が設けられています。
① | 保険期間の最初の6/10の期間 | 1/2損金算入、1/2資産計上 |
---|---|---|
② | 保険期間の残りの4/10の期間 | 支払額と、①の期間の前払保険料を取り崩し、どちらも損金に計上 |
5. 仕訳例
- 契約者・保険金受取人「法人」・被保険者「代表取締役」
- 保険加入時の年齢40歳、保険期間40年(満了時80歳)
- 年間の支払保険料・・・1,000千円
- 死亡保険金50,000千円
(1) 保険期間終了まで解約しない場合
① 前半(6割期間)の年間仕訳(24年目まで)(単位:千円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期前払保険料(資産) | 500 | 普通預金 | 1,000 |
保険料(費用) | 500 |
- 24年目までは、半分が長期前払保険料(資産)、半分が保険料(費用)となります。
② 後半(4割期間)の年間仕訳(25年目以降16年間)(単位:千円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
保険料(費用) | 1,750 | 普通預金 | 1,000 |
長期前払保険料(資産)(※) | 750 |
(※)25年目からは、24年目までに積み立てた「長期前払保険料」(資産)を、残期間16年で均等按分し、取り崩します。
- 24年目までの長期前払保険料(資産)計上額合計・・12,000千円(500千円×24年)
12,000千円÷16年=750千円
(2) 途中解約した場合
- 加入後20年目に解約して解約払戻金を12,000千円受け取った。(単位:千円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 12,000 | 保険解約収入(営業外収益) | 2,000 |
長期前払保険料(資産)(※) | 10,000 |
(※)20年目時点の長期前払保険料(資産)残高10,000千円(500千円×20年)
「保険解約収入」には税金がかかります。
(3) 死亡により保険受取時
加入後20年目に解約して解約払戻金を12,000千円受け取った。(単位:千円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 50,000 | 保険解約収入(営業外収益) | 40,000 |
長期前払保険料(資産) | 10,000 |
上記(2)と同様、「保険解約収入」には税金がかかります。
6. 参照URL
(法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱い)
https:/https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/870616/01.htm
<< 前の記事「000」次の記事「国内FXと海外FXの違い/税務処理」 >>