No191.仮想通貨にかかる所得税計算の具体例
前々回、仮想通貨取引での、税法上の所得の計算方法をご説明しました。
また、前回は、仮想通貨で生じた所得「区分」と「損失」の取扱いについて触れました。
そこで、今回は、具体例をもとに、実際に「所得税」の計算を行ってみます。
1.給与所得者の場合
- 年収500万円の会社員(年末調整済)
- 給与のほか、ビットコイン(以下BTC)の運用を行っている。
- BTCの取得価額の計算は、原則的な方法である「移動平均法」とする。
- 基礎控除以外の「所得控除」はないものとする。
- 仮想通貨取引は、事業的規模に該当しない。
(1)パターン1~確定申告が必要な場合~
①取引情報
BTCの購入、売却関係をまとめると、以下の通り
日付 | BTC数量 | 取得価格 | 売却価格 | 移動平均単価 | |
---|---|---|---|---|---|
3/1 | 取得 | 1 | 1,000,000 | 1,000,000 | |
4/1 | 取得 | 1 | 1,500,000 | (※)1,250,000 | |
5/1 | 売却 | △1 | 2,000,000 | 1,250,000 | |
6/1 | 取得 | 1 | 2,600,000 | 1,925,000 |
(※)(1,000,000円 + 1,500,000円) ÷ (1BTC + 1BTC) = 1,250,000円/1BTC
②所得税額の計算(総合課税)
計算式 | ||
---|---|---|
給与所得(①) | 3,460,000円 | 500万円 – (500万円 × 20% + 54万円) |
雑所得(②) | 750,000円 | 200万円(売却額) – (125万円/BTC × 1BTC) |
所得合計(③) | 4,210,000円 | ① + ② |
所得控除(④) | 380,000円 | 基礎控除 |
課税所得(⑤) | 3,830,000円 | ③ – ④ |
所得税額 | 338,500円 | ⑤ × 20% – 427,500円(所得税率) |
復興特別所得税、住民税の計算は省略しています。
(POINT)
- ビットコインで得た利益(=雑所得)が20万円越のため、確定申告の必要あり。
- 仮想通貨の売却は雑所得であるが、「総合課税」のため給与所得等と合算を行い、「合算後の所得」に対して「累進課税」の税率が適用される。
- 仮想通貨の所得は、「総合課税」となりますが、仮に仮想通貨で損失が生じた場合でも、他の総合課税の「給与所得等」と損益通算はできません。
(2)パターン2~確定申告不要の場合~
①取引情報
BTCの購入、売却関係をまとめると、以下の通り
日付 | BTC数量 | 取得価格 | 売却価格 | 移動平均単価 | |
---|---|---|---|---|---|
3/1 | 取得 | 1 | 1,000,000 | 1,000,000 | |
4/1 | 取得 | 1 | 1,500,000 | (※)1,250,000 | |
5/1 | 売却 | △1 | 1,000,000 | 1,250,000 | |
6/1 | 取得 | 1 | 2,600,000 | 1,925,000 |
(※)上記1.(1)と同様。
②所得税額の計算(総合課税)
雑所得 100万円(売却額) – (125万円/BTC × 1BTC) = △25万円
給与以外の雑所得(=ビットコインでの利益)が20万円以下になるので、確定申告の必要はありません。
2.個人事業主の場合
- 個人事業主で、海外FX(雑・総合課税)とビットコインの運用のみを行っている。
- 海外FX所得(雑所得・総合課税)は300万円とする。
- 取得価額の計算は、例外的な方法である「総平均法」とする。
(原則的な方法は「移動平均法」ですが、上記1と対比して、ここでは「総平均法」の例題にしています)。 - 基礎控除以外の「所得控除」はないものとする。
- 仮想通貨取引・海外FX取引は、事業的規模に該当しない。
(1)パターン1~仮想通貨取引が利益の場合~
①取引情報
BTCの購入、売却関係をまとめると、以下の通り
日付 | BTC数量 | 取得価格 | 売却価格 | 移動平均単価 | |
---|---|---|---|---|---|
3/1 | 取得 | 1 | 1,000,000 | (※)1,700,000 | |
4/1 | 取得 | 1 | 1,500,000 | (※)1,700,000 | |
5/1 | 売却 | △1 | 2,000,000 | (※)1,700,000 | |
6/1 | 取得 | 1 | 2,600,000 | (※)1,700,000 |
(※)(1,000,000円 + 1,500,000円 + 2,600,000円) ÷ (1BTC + 1BTC + 1BTC) = 1,700,000円/1BTC
②所得税額の計算(総合課税)
計算式 | ||
---|---|---|
雑所得・海外FX<(①) | 3,000,000円 | |
雑所得・仮想通貨(②) | 300,000円 | 200万円(売却額) – (170万円/BTC × 1BTC) |
所得合計(③) | 3,300,000円 | ① + ② |
所得控除(④) | 380,000円 | 基礎控除 |
課税所得(⑤) | 2,920,000円 | ③ – ④ |
所得税額 | 194,500円 | ⑤ × 10% – 97,500円(所得税率) |
復興特別所得税、住民税の計算は省略しています。
(2)パターン2~仮想通貨取引が損失の場合~
①取引情報
日付 | BTC数量 | 取得価格 | 売却価格 | 移動平均単価 | |
---|---|---|---|---|---|
3/1 | 取得 | 1 | 1,000,000 | (※)1,700,000 | |
4/1 | 取得 | 1 | 1,500,000 | (※)1,700,000 | |
5/1 | 売却 | △1 | 1,000,000 | (※)1,700,000 | |
6/1 | 取得 | 1 | 2,600,000 | (※)1,700,000 |
(※)上記2.(1)と同様。
②所得税額の計算(総合課税)
計算式 | ||
---|---|---|
雑所得・FX(①) | 3,000,000円 | |
雑所得・仮想通貨(②) | △700,000円 | 100万円(売却額) – 170万円 |
所得合計(③) | 2,300,000円 | ① + ② |
所得控除(④) | 380,000円 | 基礎控除 |
課税所得(⑤) | 1,920,000円 | ③ – ④ |
所得税額 | 96,000円 | ⑤ × 5%(所得税率) |
(POINT)
- 仮想通貨の売却は、雑所得、かつ「総合課税」のため、他の「総合課税」の雑所得と合算した所得に対して「累進課税」の税率が適用される。
- 仮想通貨の損失は、総合課税の雑所得(海外FX)とは内部通算できる。
- 今回の事例は、海外FX(総合課税の雑所得)ですので、内部通算できますが、国内FXの場合は、申告分離課税ですので、仮想通貨の所得(総合課税)と内部通算はできません。
3.参照URL
(ビットコインを使用することにより利益が生じた場合)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1524.htm
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