No64.【高額譲渡】固定資産を個人⇒個人・個人⇒法人に「高額譲渡」した場合の課税関係/親族間・同族会社への譲渡
個人が保有する「不動産等」の売買は、原則として「時価」をもとに行います。
しかし、取引相手が「親族や関連会社等」の場合、取引価額に恣意性が入り、適正な時価での売買が行われないケースがあります。こういった「適正な時価」での譲渡が行われない場合、売り主側・買主側とも税金が課税される場合があります。
そこで今回は、個人が保有する不動産等を、通常の時価よりも高く譲渡(高額譲渡)する場合の、税務上の取扱いにつき解説します。
なお、法人⇒個人・法人⇒法人の「高額譲渡」については、No63をご参照ください。
1.個人⇒個人に高額譲渡した場合
例えば、子供が個人で所有する土地を、親に高く買ってもらう場合などです。
- 子供が個人で保有する土地(取得価額1,000)を、親に4,000で売却した。
- 土地売却時の適正時価は1,500とする。
(1)売り手側(個人・子供)
個人側は、「適正時価」で売却したものとみなされ、「適正時価と取得価額」の差額につき所得税が課税されます(譲渡所得)(所得税法59)。
また、「実際売買価額と適正時価」の差額は、個人から贈与を受けたものとして、贈与税が課税されます(合理的な根拠があれば所得税も可)
所得税(譲渡所得)= (適正時価 - 取得価額)× 所得税率
贈与税 =(実際売買価額 - 適正時価)× 贈与税率
(2)買い手側(個人・親)
高額譲渡の場合は、買い手には税金はかかりません。
- 買い手側の取得価額は、「適正時価」となります。実際取得価額の引継ぎはなく、「適正時価」を超えた分は、「贈与」と扱われます。
(3)まとめ
個人⇒個人 | 所得税 | (1,500 – 1,000) × 税率 | 課税なし | |
---|---|---|---|---|
贈与税 | (4,000 – 1,500) × 税率 |
2.個人⇒法人に高額譲渡した場合
例えば、法人の役員が、個人で所有する土地を、法人に高く買ってもらう場合などです。
法人成りの場合も「譲渡」となりますので、該当するケースがあります。
- 法人の役員が、個人で保有する土地(取得価額1,000)を、同族会社の法人に4,000で売却した。
- 土地売却時の適正時価は1,500とする。
(1)売り手側(個人・役員)
個人側は、「適正時価」で売却したものとみなされ、「適正時価と取得価額」の差額につき所得税が課税されます(譲渡所得)(所得税法59)。
また、「実際売買価額と適正時価」の差額は、法人から贈与を受けたものとして、所得税が課税されます(給与所得)。
所得税(譲渡所得) = (適正時価 - 取得価額) ×所得税率
所得税(給与所得) = (実際売買価額 - 適正時価)× 所得税率
現金(実際売買価格) | 4,000 | 土地(簿価) 売却益(譲渡所得) 給与収入 |
1,000 500 2,500 |
- なお、売り手の個人が、同族役員以外の場合は、給与所得部分は、「一時所得」となります。
(2)買い手側(法人)
買い手が法人の場合は、「適正時価」で買ったとみなされ、「実際売買価額と適正時価」の差額は、「役員報酬」認定されます。役員報酬は、定期同額給与以外は、原則として「損金不算入」となり、法人税が課税されます(法人税法22)
法人税(役員報酬) = (実際売買価額 - 適正時価)× 法人税率
(仕訳)
土地(適正時価) 役員報酬(差額) |
1,500 2,500 |
現金(実際売買価額) | 4,000 |
- 当該差額は「役員報酬」となります。役員報酬は、原則として、定期同額給与以外は、原則として「損金不算入」となり、法人税が課税されます。
- 買い手側の取得価額は、「適正時価」となります。実際取得価額の引継ぎはなく、「適正時価」を超えた部分は、「役員報酬」と扱われます。
- なお、売り手が同族役員以外の場合は、「寄付金」となります。寄付金は一定額を超えると損金不算入となります。
(3)まとめ
個人⇒法人 | 所得税(譲渡) | (1,500 – 1,000) × 税率 | 法人税(役員報酬) | (4,000 – 1,500) × 税率 |
---|---|---|---|---|
所得税(給与) | (4,000 – 1,500) × 税率 |
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