No53.株式交換とは?
目次
1.どんなもの?
簡単にいうと、自分が持っている株を渡す代わりに、対価として新たな会社の株式を取得することを言います。企業買収の一つとして利用されます。
(イメージ図)
例えば、それぞれオーナーが別々のクレア社・ビズ社があるとします。
クレア社がビズ社を100%支配したい場合、ビズ社のオーナー乙さんから、保有ビズ社株をすべて受け取り、対価としてクレア社(自社の株)を交付する株式交換を行います。
外見上子会社の株と親会社の株を交換しているようにみえるので、株式交換という呼び方がされます。
2.株式交換の特徴
- 親子関係を創設するにあたって、通常は現金等の資金が必要であるが、株式交換の場合は、自社の株式を代価にすることができるため、新たな買収資金調達が不要。
- 両社に資本関係が全く存在しなくても、100%子会社にして親子関係を創設することができる。
- 会社の資産や事業の状況を変えることなく、支配関係だけを変更することができる。
3.適格株式交換
適格株式交換に該当する場合、完全子会社株主は、完全親会社に対し、子会社株式を簿価により譲渡したものとして、譲渡損益の繰延が行われます。
4.適格株式交換の要件
持分割合 | 株式交付 | 持分 継続 |
従業員引継 | 事業継続 | 事業関連性 | 規模 or 役員 | 株式継続保有 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
企業グループ内分割 | (100%) | ◯ | 100% | × | × | × | × | × |
(50%超 100%未満) |
◯ | 50%超 100%未満 |
◯ | ◯ | ◯ | × | × | |
共同事業のための分割 | (50%以下) | ◯ | − | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
(1)企業グループ内再編とは?
- 親会社と子会社が同一の者に50%超を所有されている企業グループ内の株式交換
(同一の者=親族等同族関係者含む)
- 親会社が子会社の50%超を直接(又は間接)所有している企業グループ内の株式交換
(2)共同事業のための株式交換とは
資本関係のない複数の会社が、相互に関連性ある事業を集約することで、競争力の強化を図ることを目的として行われる株式交換です。
(3)各種要件の説明
要件 | 内容 |
---|---|
株式交付要件 | 株式以外の資産が交付されない交換であること(金銭交付は×) (完全支配親会社株式もOK、無対価の場合もあり) |
持分継続要件 | 交換前後に、持分関係が継続することが見込まれること |
従業員引継要件 | 「子会社」の従業員の概ね8割以上が継続従事見込 |
事業継続要件 | 「子会社」の主要事業の継続が見込まれること |
事業関連性要件 | 「子会社」の主要事業と「親会社の事業」が相互に関連すること |
規模比率or役員要件 | ●子会社と親会社事業の事業規模(売上額、従業者数等)が概ね5倍を超えないor ●子会社の役員(常務取締役以上)が、1人以上継続すること |
株式継続保有要件 | 株式の継続保有が見込まれること (株式交換完全子法人の株主が50人以上の場合は、不要) |
(平成29年4月20日追記)
平成29年度税制改正により、以下が追加されました。
対象会社の発行済株式の3分の2以上を有する場合、その他の株主等に対して交付する金銭その他の資産を除外して「対価要件」の判定を行う(スクイーズアウト関連税制整備)
つまり、例えば、株式交換で3分の1未満の少数株主に金銭を交付する場合は、従来は「非適格」でしたが、他の要件を満たせば、「適格」になります。
5.株式交換と現物出資の比較
「現物出資」も、適格要件を満たす場合には「適格現物出資」となります。
子会社株式を現物出資した場合、実質的には株式交換と同じ効果がありますが、「適格要件」は、現物出資の方が厳しい要件となっています。
適格現物出資の要件は、「現物出資法人が被現物出資法人の発行済株式の100%を保有しており、現物出資後もその関係の継続が見込まれる場合」
となっていますので、注意しましょう。
6.適格株式交換の仕訳(税務仕訳)
会社 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
親会社 |
子会社株式(簿価)(※) | 資本金(簿価) |
|
子会社 |
仕訳なし(株主が変わるだけ) |
|
|
元子会社株主 | 親会社株式 | 子会社株式(簿価) |
|
(※) 株主数によって異なります。
株主数50人以上・・・簿価純資産 株主数50人未満・・・帳簿価額
7.非適格株式交換の仕訳(税務仕訳)
会社 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
親会社 (新株発行仕訳) |
子会社株式(時価)(※) |
資本金(時価) |
|
子会社 |
資産 | 資産評価益 |
|
元子会社株主 | 親会社株式(時価) | 子会社株式(簿価) 譲渡益(差額) |
|
(※)時価評価資産は、固定資産、土地等、有価証券、金銭債権、繰延資産(売買目的有価証券等、時価評価資産から除かれるものもありますので注意です)。
8.税務処理まとめ
税制適格 | 税制非適格 | |
---|---|---|
親会社 | 課税なし | 課税なし |
子会社 | 課税なし | 課税あり(※1) |
元子会社株主 | 課税あり(※2) | 課税あり(※2) |
親会社株主 | 課税なし | 課税なし(※3) |
(※1)一定の場合、評価損益計上不要(100%グループ内の非適格株式交換)
(※2)交換対価が親会社株式(or完全支配親法人)のみの場合は、譲渡損益を繰延可(=税金発生しない)
(※3)株式交換比率が適正でない場合は、株主間贈与課税の論点あり
9.株式交換の手続の流れ(会社法)
① | 株式交換契約の締結 | 株式交換当事者間で契約を締結。 |
---|---|---|
② | 事前開示手続 | 双方の会社で契約内容等を備置し、各株主等に事前開示。 |
③ | 株主総会の承認 | 各社で株主総会の特別決議必要。なお、一定の要件を満たす場合には、株主総会の省略が認められる(注)。 |
④ | 反対株主等からの株式等の買取 | 各会社は、各株主宛に株主交換の旨などを通知し、反対株主等から株式買取請求に応じる。 |
⑤ | 債権者保護手続 | 原則的に不要(株式交換対価として、完全親法人株式以外の金銭等を交付する場合には必要) |
⑥ | 効力発生(効力発生日) | 効力発生日は、株式分割契約で定められる。 |
⑦ | 事後開示手続 | 双方の会社で、契約内容等を備置し、各株主等に事後開示。 |
(注)株主総会決議を省略できる場合があります(簡易株式交換・略式株式交換)。
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