No28.特定の評価会社の判定基準や判定の順番は?(比準要素1、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社等)
相続税上、「取引相場のない株式の評価」は、原則として、会社規模等に応じて決められていますが、単純に規模等で区分すると、正しい評価ができない会社もあります。
例えば、資産の大部分が「土地」や「株式」で占めている会社に、上場会社の株価に比準する「類似業種比準価額方式」を適用するのは、実態に沿いません。
そこで、相続税上、こういった「特定の評価会社」につき、例外的な評価方法が定められています。
目次
1.特定の評価会社の種類と判定の順番
(1)特定の評価会社の種類と評価方法一覧
財産基本通達上、一般の評価会社とは異なる「特定の評価会社」として、以下の6つの種類の会社が限定列挙されています。
種類 | 評価方法 | |
---|---|---|
① | 比準要素数1の会社 | 原則:純資産価額方式(80%評価OK) 類似業種比準価額25%+純資産価額75%も可 |
② | 株式等保有特定会社 | 原則:純資産価額方式(80%評価OK) S1+S2方式も可 |
③ | 土地保有特定会社 | 純資産価額方式(80%評価OK) |
④ | 開業後3年未満の会社 比準要素数ゼロの会社 |
純資産価額方式(80%評価OK) |
⑤ | 開業前または休眠中の会社 | 純資産価額方式 |
⑥ | 清算中の会社 | 清算分配金見込額 |
- 対象会社の株式を、「同族株主以外の株主」が取得した場合、配当還元方式で評価できます(上記⑤⑥の会社は除く)。
- 対象会社の株式を、「株主グループ(株主+同族関係者)議決権割合が50%以下」の株主が取得した場合、純資産価額方式の80%で評価できます(上記②のS1+S2方式、⑤⑥の会社は除く)。
(2)判定の順番
特定の評価会社の判定は、上記の⑥清算中の会社から①比準要素数1の会社の順番で判定します。
例えば、清算中の会社であれば、たとえ比準要素1の会社であっても、清算中の会社として評価を行います。
最終的に、①の比準要素数1の会社に該当しない場合は、「一般の評価会社」と判定されます。
2.比準要素数1の会社
(1)比準要素数1の会社とは?
「比準要素」とは、類似業種比準価額方式の計算の基となる「1株当たり配当金額、利益金額、純資産価額」の3つのことを指します。この3つのうち、①いずれか「2つがゼロ」かつ、②直前々期末基準でも2つ以上がゼロの会社は、比準要素1の会社と呼ばれます(他の「特定の評価会社」に該当するものは除きます)。
比準要素1の判定については、具体例を用いて別途まとめています。No84をご参照ください、
(2)相続税上の評価方法
比準要素1の会社は、原則として、「純資産価額方式」で評価します。
ただし、類似業種比準価額25%+純資産価額75%(併用方式)も認められます。
3.株式等保有特定会社
(1)株式等保有特定会社とは?
総資産(相続税評価額ベース)に占める、株式等(相続税評価額ベース)の金額割合が50%以上の会社をいいます。割合判定は、相続税評価額(税法上の帳簿価額)ベースで行います。したがって、資産・負債の評価にあたっては、純資産価額方式と同様の留意事項があります。
なお、保有割合の引き下げ等を目的とした資産変動については、「なかったもの」として、株式等保有割合の判定が行われます。
(2)相続税上の評価方法
株式等保有特定会社は、原則として、純資産価額方式により評価します。
ただし、「S1+S2」方式(類似業種比準価額修正方式)も認められています。
どちらの評価方法であっても、純資産価額方式の占めるウエイトが高くなるため、含み益のある株式を多数保有している場合は、一般的に株価が高額になります。
(3)S1、S2方式とは?
S1、S2とはいったい何のことなのか・・簡単なイメージを示すと以下の通り。
該当部分 | 評価方法 | |
---|---|---|
S1 | 下記S2以外の部分 | 会社規模に応じた原則的評価方式 |
S2 | 株式等に相当する部分 | 純資産価額方式 |
つまり
●株式等に相当する部分をまず取り出して、純資産価額方式で評価(S2)
●残りの部分(S1)は原則的な評価(類似業種、純資産、折衷等)
(受取配当金収受割合を考慮)
そして、最終的にS1とS2の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。
4.土地保有特定会社
(1)土地保有特定会社とは?
総資産(相続税評価額ベース)に占める、土地等(相続税評価額ベース)の金額割合が「一定割合以上」の会社をいいます(地上権、借地権、販売用の土地等も含む)。
割合判定は、相続税評価額(税法上の帳簿価額)ベースで行います。したがって、資産・負債の評価にあたっては、純資産価額方式と同様の留意事項があります。
また、保有割合の引き下げ等を目的とした資産変動については、「なかったもの」として、土地等保有割合の判定が行われます。
(2)一定の割合とは?
「一定割合」は、会社規模等(大会社・中会社・小会社)によって決められています。大会社、中会社、小会社の区分については、「会社区分による評価方法の選択」をご参照下さい。
会社区分に応じ、下記の土地保有割合の場合は、「土地保有特定会社」になります。
大会社 | 土地保有割合70%以上 |
---|---|
中会社 | 土地保有割合90%以上 |
小会社 | 業種により異なる(※) |
(※)小会社は、業種及び総資産価額に応じて、土地保有割合が一定割合以上の場合は「土地保有特定会社」となります。以下の通りです。
総資産価額 | 土地保有割合 | ||
---|---|---|---|
卸売業 | 小売・サービス業 | 左記以外 | |
20億円以上 | 15億円以上 | 70%以上 | |
7,000万円以上 | 4,000万円以上 | 5,000万円以上 | 90%以上 |
(3)相続税上の評価方法
土地保有特定会社は、原則として、純資産価額方式により評価します。
土地保有特定会社では、純資産価額の占めるウエイトが高くなるため、含み益のある土地を多数保有している場合は、株価が高額になります。
5.開業後3年未満の会社・比準要素0の会社
(1)開業後3年未満の会社・比準要素0の会社とは?
開業後3年未満の会社とは、課税時期において開業後3年未満の会社をいいます。
また、比準要素0の会社とは、類似業種比準価額方式の計算の基となる「1株当たり配当金額、利益金額、純資産価額」の3つがすべてゼロの会社をいいます。比準要素1の会社と異なり、直前期を基準とした3要素のみで判定します(財通189)。
(2)相続税上の評価方法
開業後3年未満の会社・比準要素0の会社は、原則として、純資産価額方式により評価します。
(3)切り捨て規定注意
比準要素は、切り捨ての規定があるので注意です
1株当たり配当金額 | 10銭未満切り捨て |
---|---|
1株当たり純資産額 | 円未満切り捨て |
1株当たり利益金額 | 円未満切り捨て |
各要素がプラスの場合でも、切り捨ての規定により比準要素が「ゼロ」になるケースがありますので、注意が必要です。
6.開業前又は休業中の会社
(1)開業前の会社とは
開業前の会社とは、会社設立の登記完了後、事業活動が開始されていない会社です。また、休業中の会社とは、相当長期間にわたり休業している会社をいいます。
(2)相続税上の評価方法
開業前又は休業中の会社は、原則として、純資産価額方式により評価します。
7.清算中の会社
(1)清算中の会社とは
清算中の会社とは、名前の通り、清算の途中段階にある会社をいいます。
(2)相続税上の評価方法
清算中の会社は、原則として、「清算分配見込額を現在価値に割り戻した金額(※)」により評価します。
(※)分配を受けると見込まれる日までの期間(1年未満端数切上げ)に応ずる基準年利率による複利現価の額
8.参照URL
(特定の評価会社の株式)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/05.htm
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