No152.連結納税制度下での寄付金調整
100%グループ法人内での寄付金は、「寄付金修正」が必要になります。
一方、連結納税制度下では、「投資簿価修正」という制度があります。
では、「連結納税制度」を採用している場合の「寄付金修正」はどうなるでしょうか? ニッチな論点なんですけど・・(笑)。
結論は、不要となります。
以下、連結納税を採用していない場合と、連結納税の場合を比較した「例題」を用いて解説します。
1. 例題
- 親会社クレアビズ社は、A社・B社をそれぞれ100で出資設立(100%子会社)
- A社からB社に、100寄附を行った(A・B社設立後の取引は、これのみ)。
- 親会社は、上記寄付の後、現金ゼロとなったA社を、外部に売却した。
- クレアビズ社・A社・B社間は「グループ法人税制」の適用があるものとする。
(イメージ図)
2. 連結納税を採用していない場合
(1) 設立時と寄付後の各社の純資産の比較
設立時の各社純資産 | 寄付後の各社純資産 | |
---|---|---|
A社 | 100 | 0 |
B社 | 100 | 200 |
寄付後のA社の純資産はゼロ(現金ゼロ)となります。
この時点で、A社株式の市場価値は、理論的にはゼロとなるはずです。
もし、寄附後に、親会社がA社株式を市場価値どおりゼロで売却した場合、親会社の仕訳は以下となります。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
会計仕訳 | 現金 株式売却損 |
0 100 |
A社株式 | 100 |
親会社が、意図的に赤字を出す目的でA社を設立して、A社⇒B社に寄付をさせれば、上記のように売却損を計上する「利益操作」ができてしまいます。
そこで、グループ法人税制では、「寄付金調整」という制度があり、申告書上、下記の調整を行います。
(2) 寄付金調整
グループ法人税制では、親会社は以下の「寄付金調整仕訳」を行います。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
寄付金税務調整仕訳 | B社株式 | 100 | A社株式 | 100 |
申告調整後の売却益 | 現金 株式売却損(※) |
0 0 |
A社株式(※) | 0 |
(※)寄付金税務調整後の「A社税務簿価」はゼロとなり、売却損益も「ゼロ」になります。
3. 連結納税制度を採用する場合
(1) 各社の個別所得
連結個別所得は以下となります。
A社(※) | 0 |
---|---|
B社(※) | 0 |
(※)連結納税下でもグループ法人税制は強制適用です。
A・B社とも、グループ法人税制の適用により、寄付金損金・益金不算入⇒個別所得は「ゼロ」となります。
(2) 各社の申告書
ここでは、寄附を行ったA社の申告書で解説します
(A社の別表4)~寄付をした方~
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
当期利益 | △100 | △100 | ||
加算 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | |
減算 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | |
仮計 | △100 | △100 | ||
寄付金の損金不算入額(加算) | 100 | 100 | ||
最終所得 | 0 | △100 | 100 |
A社(寄付をした方)の「別表4」での最終所得は「ゼロ」となります。
同様にB社もゼロとなります。
(A社の別表5)~寄付をした方~
区分 | 期首 | 当期中の増減 | 差引 | |
---|---|---|---|---|
減 | 増 | |||
利益準備金 | ||||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
繰越損益金 | △100 | △100 |
A社(寄付をした方)の別表4では、「所得ゼロ」となりますが、寄付金損金不算入は、「社外流出」のため、別表5では調整がでてきません。
一方で、会計上は寄付金100だけ損失が生じているため、「繰越損益金」の欄は△100が残ります
(逆に、B社では、繰越損益金+100となっているはず)
つまり、A社では、「所得ゼロ」となりますが、別表5の利益積立金は、△100で残ります。
(B社も、A社同様「所得ゼロ」となり、別表5の利益積立金は+100で残ります)
(3) 親会社クレアビズ社の投資簿価修正
連結納税の親会社クレアビズ社は、A社・B社の別表5をみながら、以下の投資簿価修正を行います。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
申告調整(※) | B社株式 | 100 | A社株式 | 100 |
(※)A社・B社それぞれの別表5 利益積立金△100、100に対応
(4) 結論
連結納税下では、売却時に行われる「投資簿価修正」の制度により、グループ法人税制の「寄付金簿価調整」と同じことが行われますので、
連結納税下での寄付金調整仕訳は不要となります。
なお、繰り返しになりますが、グループ法人税制は強制適用であり、連結納税制度の上位の制度ですので、
連結法人間での寄付が行われた場合も、寄付金の損金不算入・受贈益の益金不算入という点は変わりません。
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