No233.【IPOを考える方必見】IPOを目指す際に最初に実行すべき「5つの行動」
IPO(株式上場)の準備期間は、「準備着手」から「最終上場」に至るまで、一般的には少なくとも「3年程度」はかかります。
過去の自分の経験では、IPOを希望される会社のうち、実際に上場までたどり着いた会社は、全体の2~3%くらいではないでしょうか。
IPOは簡単にできるものではない・・というのが正直な感想です。上場するためには、多くの「基準」をクリアする必要があるため、相応の「時間」や「業務量」が必要になります。
最近は「新型コロナウィルス」の影響により、証券会社や取引所から、「上場申請取り下げ依頼」も来ているようです。
今回は、IPOを目指す際、最初に実行すべき行動を「5つ」に絞って解説します。
1. 公認会計士によるショートレビュー(予備調査)
IPOに興味を持った場合、まず最初の行動として、ご自身の会社の財務数値を第三者に評価してもらう作業となります。
具体的には、公認会計士に「ショートレビュー」を依頼し、会社の「決算数値」の内容を確認してもらいます。
「ショートレビュー」とは、第三者が会社の「決算数値」を調査し、会社の現状把握、上場に向けて解決すべき課題、上場会社の会計基準(あるべき数値)との乖離を調査する作業です。
財務調査とも呼ばれ「調査した結果」については、一般的に「レポート」が提出されます。
このレポートをもとに、実際に株式上場をめざすかどうか?の意思決定を行います。現実的には、この「ショートレビュー」で、想定外の論点が発見される会社がほとんどで・・この時点で、IPOをあきらめてしまう会社も多いです。
例えば、会計基準変更に伴う数値修正(退職給付債務や税効果会計など)や、内部統制の整備不備など・・従来の税務をベースとした経理処理では「想像すらしていなかった論点」を指摘され、大幅な損失の計上を余儀なくされる場合がほとんどです。
2. 市場の決定・外部利害関係者の承諾
ショートレビューが無事終わり、IPOを目指そう!と決定したら、まずはどの市場をめざすか?を決定します。
企業規模や業務内容、会社の成長性などによって、ゴールとなる「株式市場」は異なってきます。
また、株式上場を目指すことは、良くも悪くも、会社を取り巻く「利害関係者」に非常に大きな影響を与えます。
例えば、既存株主の立場では、上場を見据えた「資本政策」により、持株比率の調整が行われるとともに、上場時に株式を「市場に売出し」することで、保有株式数が大幅に減少する可能性があります。
また、メインバンクの立場では、上場準備コストによる財務数値インパクトは、「自己査定」や「融資審査」に影響がありますし、会社から「新たな資金調達への協力」なども要請される可能性があります。
したがって、これらの「利害関係者」に対して、あらかじめ「上場準備を進める旨」につき、事前に了承を得ておく必要があります。
3. 公認会計士・監査法人の選定
IPO(株式上場)するためには、上場を申請する「直前2期間」の決算書につき、公認会計士による監査証明書が必要となります。
監査証明書とは、「会社の決算書が適正である、という第三社のお墨付きの意見」のことです。
監査証明書をもらうには、上場会社で要求されている「一般に公正妥当と認められた会計基準」での会計処理に準拠する必要があります。
ここのハードルは・・かなり高いです。
なお、上場申請直前2期間には、2期前の期首も含まれますので、実質的には上場申請直前2期以前に公認会計士に依頼しておかないといけません。
監査証明書がなければ、物理的に上場できませんので、株式上場の意思がある程度固まったら、できるだけ早い時期に、監査法人や公認会計士に「声がけ」しておくことをお勧めします。
4. 上場準備チームの組成
上場準備作業は、会社の経理・管理部門だけで完結できるものではありません。
実現可能性の高い「事業計画」の策定が求められますので、営業部署による精度の高い「売上予算」や、生産部署による「工数・原価予算」の情報も必要になります。
また、コンプライアンス・人事制度構築の面では、法務・人事部なども関連します。
つまり・・IPO準備作業は、経理・管理部門にとどまらず「全社に横断するプロジェクト」となります。
上場準備作業を開始する際には、全部署を取りまとめる「上場プロジェクトチーム」を発足し、当該チームが主体となってIPO準備を進めていくことになります。
一般的に、当該プロジェクトチームの責任者は、「社長」や「管理担当取締役」が就任する場合が多いです。
5. 主幹事証券会社の選定
主幹事証券会社は、上場にあたっての手続サポート全般を担います。
特に、事業計画の策定(ビジネスプラン策定も含む)は、上場申請自体の可能性や、上場時の株価に直接影響する項目ですので、証券会社のサポートは非常に重要になります。
証券会社の役割は、事業計画策定支援にとどまらず、上場スケジュール・資本政策の策定、社内管理体制の整備等に関するアドバイスなど、多岐にわたります。
上場直前期には、証券取引所の上場審査のプレチェック的な位置づけで、主幹事証券会社の「審査部」は、事前審査を行います。
通常は、証券会社とコンサルティング契約を締結し、1年~2年程度、上場に向けた準備作業が行われます。
(まとめ)
今回は、「上場準備を検討するにあたって最初に行動すべき内容」を5つに絞って紹介しました。
もちろん、貴社のビジネス自体が「今後成長する要素」が十分にあることが「大前提」となります。
現実的に考えると、「IPO準備作業」は、細かなところの整備が求められ、想像以上にコストもかかりますので、一般的にはハードルが高い作業となります。
したがって、個人的には、先導する社長が「どこまでIPOに対して強い思いを持っているか」「途中でくじけない真の通った気持ちがあるかどうか」で、最終的にIPOできるかどうか?は・・決まるような気がします。
中途半端な気持ちでは「IPO準備作業」は確実に継続しません。
まずは、自分の会社がIPOをめざす「積極的な理由・メリット」があるのか?「IPO後の自社のイメージ」など、中長期的な会社の姿を想像しながら、社長が「強い意志」を持って進めていくことが大切だと・・個人的には思います。
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