No219.IPOのスケジュールと上場費用
前回、「IPO市場の概要」や「メリット・デメリット」をお伝えしましたが、今回はIPOまでの「一般的なスケジュール」や「上場費用」についてお伝えします。
1. IPOまでにかかる時間
中小企業の社長様の中には、簡単にIPOできる!と考えている方もおられますが・・
実は・・そんなに簡単なものではありません。
少なくとも、申請直前2期間分については「公認会計士による監査証明書」が必要となります。
つまり・・最低2年はかかるということですね。
平均的にかかる期間は、3~5年程度でしょうか。
また、IPOするためには、公認会計士の他、証券会社や証券代行会社等、さまざまな利害関係者の協力をもとに、「社内体制の整備」を進めていかなければいけません。
(日本取引所グループHP 新規上場基本情報より)
2. 上場準備にかかる費用
上場準備費用は、外部に支払う費用だけで試算しても、おおむね50百万円程度はかかるといわれています。
外部支払費用以外にも、社内体制整備やディスクロージャー対応等の「社内人件費」もかかってきますので、現実的には、それ以上のコストが生じます。
(1) 上場までに毎年かかる費用
上場準備に係る費用は、公認会計士への監査費用、証券会社へのコンサル費用だけでなく、社内体制整備のための人件費がかかります。
例えば、社外取締役や社外監査役等を選任する場合は、「役員報酬」が追加で発生します。
また、社内体制整備のためには、経験豊富な経理人員を採用する必要があります。
おそらく、 IPO準備費用の中でも、社内人件費が一番高いのではないでしょうか。
毎年3・4千万程度はかかると思われます。
(上場まで毎年かかるもの)
公認会計士の監査費用 | 年間 7・8百万円~ |
---|---|
証券会社費用 | 年間 10百万円~ |
社内人件費 | 年間 30百万円~ |
(2) 上場時にかかる費用
上場する際には、証券取引所に審査料や新規上場料を支払います。
以下の通りです。
東1 | 東2 | マザーズ | JQ | |
---|---|---|---|---|
上場審査料 | 400万円 | 400万円 | 200万円 | 200万円 |
新規上場料 | 1,500万円 | 1,200万円 | 100万円 | 600万円 |
- 上記以外に公募・売出に係る費用 = 株式数 × 公募価格 × 1/1000
上記の他、「印刷費用」や「登録免許税」など様々な費用がかかります。
印刷費用(上場申請書類 + 届出書目論見書等) | 500万円程度 |
---|---|
登録免許税 | 資本組入額 × 7/1000 |
IR対応費用・払込取扱手数料・弁護士費用他 | 1,000万円~ |
どうですか?
上場するまでには、かなりのコスト負担があることがわかりますね。
(3) 上場後の費用
上場後も「社内人件費」は、引き続き発生します。
また「監査報酬」は、一般的には上場後の方が高くなります。
最低でも毎年10百万円程度はかかるのではないでしょうか?
証券取引所には、毎年「上場維持費用」が発生し、「株主総会運営費用」もかかります。
東1 | 東2 | マザーズ | JQ | |
---|---|---|---|---|
上場維持費用 | 96万~456万円 | 72万~432万円 | 48万~408万円 | 100万~120万円 |
- 別途TDネット利用料がかかります。
3. まとめ
上場するためには、莫大な時間とコストがかかります。
私は、10年ほど前まで大手監査法人で「IPO準備」の仕事に携わっていたのですが、 100社程度関与したうち・・実際IPOできたのは、2・3社程度でしょうか。
本気でIPOを目指すのであれば、「将来の利益見込等」の形式要件はもちろんですが、上場コストや時間軸などを総合的に勘案の上、意思決定すべきだと思います。
自分の経験上、社長に「上場に対する熱い思い」がないと、確実に途中でくじけると思います。
上場準備の入り口にあたる「ショートレビュー」の際、社長に「なぜIPOを目指すのか?」という質問をするのですが、その際に「明確に回答がない」場合は・・
正直、続かないかと思います。
<< 前の記事「上場申請の審査の流れと審査基準」次の記事「IPO市場の種類とメリット・デメリット」 >>