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原価計算の勉強をした方だと・・「埋没費用」という言葉の方がピンとくるかもしれません。
サンクコスト=埋没費用のことです。
「サンクコスト」は、経済学やマーケティングでもよく出てきますが、「経営意思決定」の観点では、「意思決定に関係ないコスト」を意味します。

当たり前ですが、「経営意思決定」の場面では、最善の選択をする必要があります。
その際、「意思決定に関係あるコスト」と、「関係のないコスト」をしっかり把握しなければ・・誤った意思決定をしてしまう可能性があります。

つまり、「サンクコスト」か、そうでないか?を把握することは・・「非常に重要」なんです。
今回はこの「サンクコスト」を解説します。


1. サンクコスト(埋没費用)って何?

サンクコストは、単に「過去に支出された回収不可能なコスト」として解説される場合もあります。
しかし、大きな意味で、「意思決定に関係ないコスト」と理解した方がよいと思います。
特に「経営意思決定」の観点では、この定義が重要です。

今回のブログは、「意思決定に関係ないコスト」という観点で、以下説明します。
(直訳では、Sunk=沈む⇒沈んでしまったコストとなります)


2. サンクコストの事例


(1) 日常生活でのサンクコスト

まずは日常生活から!
例えば、古いモノを捨てられない人・・っていますよね?
この場面では・・捨てるか?捨てないか?の意思決定です。
買ったモノなのに・・もったいないという・・心理が邪魔してきますよね?
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でも、捨てるかどうか?の「意思決定」にあたっては、過去に支出した「モノ」のお金は「サンクコスト」になります。
既にお金を払ったものは、今、どう「意思決定」しても、そのお金自体は返ってきません(ココでは、売却できることは想定してません)。
今、「意思決定」すべきは、そのモノを捨てるか?捨てないか?・・なんです。

具体的なお金に置き換えると、捨てることで「得られるスペース」と、捨てない場合に「取られてしまうスペース」の比較衡量となります。
事業を行っている方だと、スペースって大切ですよね?家賃や保管料などに関係しますので。
捨てるのはもったいないけど・・家賃がかかってるんだよ?って考えると・・捨てる勇気もわくのかもしれません。

つまり、過去に支払った「モノ」の代金は、捨てるか捨てないか?の「意思決定」には関係ない「サンクコスト」となります。
逆に、この意思決定で関係のあるコストは、「捨てた場合の費用削減効果」 = 「捨てない場合に生じるコスト」となります。


(2) 自製するか?外注するか?

① 例題

現在、自社で商品を「自製」しています。
この度、外注先から、同じ商品を同量、安く提供できる旨の提案がありました。
概要は以下の通りです。

 

  • 現在の「自製」の場合、製品製造にかかる「直接費」は60。
  • 上記製品を、外注先に依頼する場合の費用(外注費)は30。
  • 外注した場合も、「自製」の場合にかかる「直接費」60に影響はない。
  • 自製・外注にかかわらず、「間接費」として地代家賃が15発生する。

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明らかに、外注の方が・・30お得ですよね?
この場合、どの費用が「サンクコスト」になるでしょう?
意思決定に関係ないコスト⇒「地代家賃」です。
自製・外注にかかわらず「家賃」は発生しますので、この「家賃」は意思決定するにあたって、考慮してしまったら×ってことです。
そんなに難しくないような気がします!

ではちょっと応用・・少し「サンクコスト」からは離れるかもですが・・
上記の事例を前提に、以下の「状況追加」があった場合はどうでしょう?

 

  • 外注の場合、設備に余裕ができるため、自製でかかっていた直接経費が5節減できる。

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「サンクコスト」は、変わらず「家賃15」です。
でも、先ほどの例よりも、外注が「さらに5得」という結論になります。
このように、「意思決定」する場合には、「サンクコスト」を見極めて排除し、「意思決定に関係あるコスト」をすべて拾って比較していきます。
 

② 注意事項

経営意思決定を行う際は、サンクコストを除外し、「経営意思決定に関連するコスト」をもれなく把握して、結論付ける必要があります。

でも実は・・上記の例では決定的に抜けている前提があります。
例えば、自製することでノウハウがたまる!などです。

ノウハウがたまることで数値には表れない「ブランド価値」が生まれるのであれば、本来は、この「価値」も考慮したうえで、意思決定すべきです。

目に見えるコストはわかりやすいのですが、目に見えない価値、数値では判断しきれない価値がある場合には、注意しましょう!
 

(3) 事業を継続するか?撤退するか?

自社で、新しい事業を始めることになりました。当初投資額は100です。

普通は、投資した「100」を回収するために頑張ってかせごう!と考えるところだと思います。
でも、事業を継続するか?撤退するか?の「経営意思決定」にあたっては、当初投資額の100は「サンクコスト」になります。

なぜなら、今、どう「意思決定」したとしても、当初投資額100は取り返すことができないからです。
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そして、上記の投資額100以外にも、「サンクコスト」はあります。
新しい事業を「継続」した場合と、「撤退」した場合の数値を比較してみます。

 

  • 新規事業開始にあたって投資した額は100。
  • 事業を継続した場合、売上100・仕入50・人件費40が見込まれる。
  • 地代家賃は30発生。当該家賃は、事業から撤退しても継続して発生する。
  • 事業から撤退した場合、人件費は配置転換を行うことで削減が可能
  • その他のコストはないものとする。
  • その他の意思決定(他のよい投資案件があるなど・・)はないものとする。

 
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どうでしょう?
一見すると、「新規事業」で赤字が出ているので「撤退すべき」という風にも見れます。
でも・・撤退した場合を見ると・・「営業損失」が拡大してしまいます。
なぜなら、撤退しても、継続的な「地代家賃」はかかってくるからですね。
つまり、「赤字には見えるけれど、この事業は継続するべき」という結論になります。

この場合、どの費用が「サンクコスト」になるでしょう?
意思決定に関係のないコスト⇒「地代家賃」です。
「地代家賃」は、事業を「継続」しても「撤退」しても影響がないコスト、つまり意思決定に関係のない「サンクコスト」になります。


(4) 「銀行借入」するか?「増資」するか?

次は、銀行借入するか?投資家からお金を募って増資するか?の例題です。

 

  • 設備購入予定額 50。
  • 設備を購入した場合、設備購入額の他、不動産取得税が5発生する。
  • 設備を設置するために、人件費が余分に10発生する。
  • 「銀行借入」の場合、利息が10発生する。
  • 「増資」の場合、支払配当が15発生する。
  • その他のコストはないものとする。

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「銀行借入」、「増資」のどちらがお得でしょう?
以下に数値をまとめてみます。
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不動産取得税やら人件費やら・・いろんな情報がありますが、この意思決定では、「支払利息」と「配当」だけを比較すれば足ります。
設備投資額5、不動産取得税5千円、人件費10は「サンクコスト」になります。


3. まとめ

「経営意思決定」にあたっては、さまざまな「コスト」や「収入」から、「意思決定に関連するデータ」だけを考慮し、「サンクコスト」を排除する必要があります。また、サンクコストが、「既に投資したお金」の場合には・・心理的な影響もあります(もったいないなど)。

過去に支出して、今後も回収できないコストは「埋没コスト」(サンクコスト)として割り切り、「経営意思決定」に影響を与えてはいけない点、留意しましょう。

 

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