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前回、経営意思決定の場面での「サンクコスト」の重要性についてお伝えしました。
今回は、経営意思決定の場面で同様に重要な論点、「機会損失」「機会費用」についてお話しします。

 

1. どんなもの?

(1) 機会損失って?

あることが原因で「利益を得る機会を失った」ため生じた「損失」のことです。
現実に生じた「販売損失」ではないですが、「チャンスを逃した結果生じた損失」となります。

 

(2) 機会費用って?

似たような概念で、「機会費用」という言葉があります。
「機会費用」は、ある行動を選択した結果、他の選択肢を選んでいたら得られたはずの「利益」のことです。

「機会損失」との区分は、それほど重要というわけではありませんが、二つを対比すると、以下の通りとなります。

 

機会損失 ある決定をしなかったことによって、発生する損失
機会費用 ある決定をしないで他の決定をしたことによって失われた利益

 

2. 具体例

(1) 機会損失の例

 

  • 得意先に100で販売する予定で、仕入を50発注
  • 上記商品の仕入納期が遅れたため、得意先に商品を販売できなかった。
  • この商品は、その他のお客様には販売することができないものとする。

 

201711_2-1

 

  • この場合、機会損失(チャンスを逃した損)は、100 - 50 = 50となります。
  • 実際の「損失」ではありませんが、これってちゃんと把握しないと、大きなチャンスを逃すことになりますよね・・。

 

(2) 機会費用の例

 

  • 商品を50仕入。
  • 上記商品を、得意先Aに100円で販売したが、実は得意先Bに販売していれば、200円で売れていたことが判明した。

 

201711_2-2

 

  • この場合、機会費用(失われた利益)は、200 - 100 = 100となります。
  • 実際の「費用」ではありませんが、「機会損失」と同じく、ちゃんと把握しないと、大きなチャンスを逃すことになりますよね・・。

 

3. 機会損失・機会費用のロスを少なくする対策は?

機会損失などは、「リスク管理」をしっかりしておけば、事前に防ぐことも可能です。

もしかしたら、仕入商品の「納期遅れ」は、当社ではなく仕入先が原因だ!と考える社長もいるかもしれません。
でも・・納期遅れを想定した「在庫保有」をしておけば、防げたロスかもしれません
つまり、対策はあるはずなんです!

ちなみに・・「天変地異的」なものは、一般的に「機会損失」とは言われません。
例えば、地震により商品がつぶれてしまったなど・・です。
自社で「コントロール」できないものは、管理しようがありませんので。

対策を書くときりがありませんが・・ここでは簡単に、「機会損失」や「機会費用」をなくすための大きなポイントだけ記載します。

 

(1) 在庫管理

「適正在庫」をしっかり把握して、在庫ロス、過剰在庫をなくす。

 

(2) 販売管理

販売価格や、市場ニーズなどから「適正販売価格」を把握。
販売計画の見直し。

 

(3) 生産管理

設備の操業度が正常か?
生産計画に問題がないか?

 

(4) 資金管理

実現可能な資金繰計画と実績比較。
将来の資金予測が適切か?

 

4. まとめ

機会損失・機会費用には、必ず「原因」があります。
原因を把握して「改善方法を検討」することで、未然のロスが防げます。

これらのコストは目には見えないものですが、会社の業績に大きな影響を及ぼします
「実際の損失」だけに目がいっていては・・大きなチャンスを逃す可能性があります。

企業経営にとって、「機会損失」「機会費用」の考え方は、非常に重要なものだと思います。

 

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