No156.国際税務でのロイヤリティ算定方法
無形固定資産にかかるロイヤリティ対価の妥当性は、国際税務上、よく問題となる論点です。
1. 無形固定資産・ロイヤリティって何?
無形固定資産というのは、モノではないが独自の「資産価値」があるものを指します。
例えば・・「特許技術」「ソフトウェア」「ノウハウ」や「販売基盤」などですね。
無形固定資産の使用に対して支払う対価は、一般的に「ロイヤリティ」と呼ばれます。
例えば、国内親会社が保有するソフトウェアや特許権などの「無形固定資産」を海外子会社が使用する場合、
海外子会社は、使用させてもらう対価として、国内親会社に「ロイヤリティ」を支払います。
国際税務上は、ロイヤリティの金額が適正(独立企業間価格)であれば問題ありません。
でも実は・・この「独立企業間価格」の算定というのが非常に難しいんですね。
2. 無形固定資産・ロイヤリティの特徴
無形固定資産は、目に見えるものではありません。
しかも、各企業独自のものが多く、「市場価値」があるわけでもありません。
したがって、無形固定資産や、ロイヤリティの価値を「金額に換算する」のは、実務上非常に悩ましい論点となります。
3. 算定方法
とはいっても・・何らかの方法で無形固定資産やロイヤリティの「独立企業間価格」を算定しなければいけません。
具体的に、どうやって算定するのでしょうか?
一般的には、以下の方法が挙げられます。
種類 | 内容 | 摘要 |
---|---|---|
独立価格比準法 | 比較可能な独立企業間の取引価格による方法 | 「同種資産」との比較が必要となるため、実務上は適用が困難 |
再販売価格基準法 | 関連者間取引における「買手の第三者再販売価格-通常利益」で算定 | 「通常利益」額は、「比較可能取引の利益率」から求めるが、この比較可能性の確保が難しい。 |
原価基準法 | 関連者間取引における「売手の原価の額+通常利益」で算定 | |
上記に準ずる方法 | 類似法人利益率を用いて算定する方法など(類似性が確保されている場合) | |
取引単位営業利益法 | 関連者間取引を、非関連者取引の営業利益と比較して、適正営業利益を算出する方法 | 実務上は、これが一番多く使われている。 詳細は、次回お伝えします。 |
利益分割法 | 対象法人と国外関連者との営業利益の合計額をそれぞれの「貢献割合」に応じて利益を配分する方法 | 貢献の程度を推測するのが難しい。 種類としては3種類ある。 ①比準利益分割法 ②寄与度利益分割法 ③残余利益分割法 |
なお、対象資産の情報は、「企業」自体が一番深く理解しているはずですので、裏を返せば、企業が有している情報をもとに、合理性のある金額を算定していれば、税務当局が当該価格を否認することも難しいとも言えます。
実務上よく用いられるのは、「取引単位営業利益法」となります。
取引単位営業利益法については、次回、改めて説明します。
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