No130.居住地国課税・源泉地国課税って?
最近は、中小企業でも「国境を越えて取引」を行うことが当たり前の時代になってきましたね。
今回は、国際取引で生じた利益に対する「税金の課税方式」についてお伝えします。
税金の課税方式は、「居住地国課税」と「源泉地国課税」の2つの方式があります。
1. 居住地国課税と源泉地国課税
「居住地国課税」とは・・
納税義務者が居住する(住んでいる・在籍している)国内で生じた所得だけでなく、国外で生じた所得も含めた「全世界所得」に対して課税を行う方式です
(全世界所得課税といいます)。
一方、「源泉地国課税」とは、所得が生じた国で課税を行う課税方式です。
例えば、日本が「居住地国」である法人(個人)は、日本で得た所得(国内源泉所得)だけでなく、海外で得た所得(国外源泉所得)にもすべて課税されます。
一方、日本が「居住地国」でない法人(個人)は、日本で生じた所得(国内源泉所得)のみに課税されます。
日本が居住地国 | 日本が居住地国でない | |
---|---|---|
課税される所得 | 国内 + 国外源泉所得 | 国内源泉所得 |
2. 二重課税
実は・・上記2つの課税方式は、世界の「ほとんどの国」で採用されています。
つまり・・裏を返すと、日本が居住地国でない会社は、別の場所で「居住地」となっているということです。
そして、「全世界所得課税」の考え方が採用される以上、「居住地国」がどこであるかにかかわらず、居住地国から見た「国外源泉所得」についてはダブって課税されているということになります。
これが、「国際間の二重課税」の問題と呼ばれるものです。
日本の法人を例にすると、「海外所得」に関しては日本で課税され、しかも、海外の国でも課税されている・・二重課税になっているんですね。
(イメージ 日本企業 アメリカ支店があるケース)
⇒アメリカでの所得は、「日本」と「アメリカ」両方で二重に課税されている!
3. 事例
(1) 日本に本店、アメリカに支店がある会社
国 | 課税主体 | 課税対象 | |
---|---|---|---|
居住地国 | 日本 | 日本 | 国内(日本)+国外(アメリカ)源泉所得 |
源泉地国 | アメリカ | アメリカ | 国内(アメリカ)源泉所得 |
- 居住地である日本では「全世界所得課税」・・国内・国外源泉所得に課税
- 源泉地国であるアメリカでは「源泉地国課税」・・国内(アメリカ)源泉所得に課税
(2)アメリカに本店、日本に支店
国 | 課税主体 | 課税対象 | |
---|---|---|---|
居住地国 | アメリカ | アメリカ | 国内(アメリカ)+国外(日本)源泉所得 |
源泉地国 | 日本 | 日本 | 国内(日本)源泉所得 |
- 居住地であるアメリカでは「全世界所得課税」・・国内・国外源泉所得に課税
- 源泉地国である日本では「源泉地国課税」・・国内(日本)源泉所得に課税
4. 二重課税を排除するには??
二重課税を排除するために、各国間での「租税条約」や、「外国税額控除」の制度が認められています。これらの制度は、また別の機会にお伝えします。