No143.【非居住者・外国法人】課税対象となる国内源泉所得の範囲は?源泉徴収が必要な取引は?租税条約との関係は?
非居住者・外国法人は、日本で発生した「国内源泉所得」に対してのみ課税されます。
そこで今回は、非居住者・外国法人(以下、「非居住者等」といいます)の「国内源泉所得」の範囲につき解説します。
1. 非居住者の課税方法・国内源泉所得の範囲
(1) 非居住者の課税方法は3つ
非居住者の課税方法は、所得税申告だけではなく、源泉徴収されるケースがあります。課税方法をまとめると、以下の3つとなります。
申告納税 | 所得税申告書で総合課税 |
---|---|
源泉徴収+申告納税 | 源泉徴収されたうえで、所得税申告書で総合課税 |
源泉分離課税 | 源泉徴収のみで課税関係が完了 |
(2) 非居住者の国内源泉所得とは?
非居住者における「国内源泉所得」は、以下の 17種類となります(所161条、164条)。そのうち、非居住者に支払う際に源泉徴収すべき取引は、所得税法212条に明記されています。
まとめると以下の通りです。(国税庁 源泉徴収のあらまし)
種類 | 内容 | PEあり | PEなし | 源泉有無 |
---|---|---|---|---|
1号 | PE帰属所得(事業所得) | 申告(※1) | - | 不要 |
2号 | 国内資産の運用又は保有による所得 | 申告(※1) | ||
3号 | 国内資産の譲渡による所得(※3) | |||
4号 | 組合事業から生ずる利益の配分 | 源泉+申告(※2) | 対象外 | 20.42% |
5号 | 国内にある土地等又は建物等の譲渡による所得 | 源泉+申告(※2) | 10.21% | |
6号 | 国内での人的役務の提供事業の所得 | 20.42% | ||
7号 | 国内不動産の貸付による所得 | 20.42% | ||
8号 | 債権、預貯金等の利子等の所得 | 源泉 | 15.315% | |
9号 | 配当等の所得 | 20.42% | ||
10号 | 貸付金利子等の所得 | 20.42% | ||
11号 | 使用料等の所得 | 20.42% | ||
12号 | 給与・報酬・年金・退職金等の所得 | 20.42% | ||
13号 | 事業の広告宣伝の賞金の所得 | 20.42% | ||
14号 | 生命保険契約に基づく年金等の所得 | 20.42% | ||
15号 | 定期積金等の給付補填金等 | 15.315% | ||
16号 | 匿名組合契約に基づく利益の分配金 | 20.42% | ||
17号 | その他の国内源泉所得 | 申告 | 申告 | 不要 |
(※1)所得税の申告納税(総合課税)の対象(源泉徴収なし)
(※2)源泉徴収+所得税申告納税(総合課税)の対象
(※3)PE帰属所得以外は、令第281条第1項第1号~8に記載された資産譲渡に限定(国内土地、建物等、事業譲渡類似の株式等)
単純に、所得税法上、源泉徴収が必要な所得に該当するものは、源泉徴収が必要となりますが、PEがある場合は、原則として申告が必要となります。
2. 外国法人の課税方法・国内源泉所得の範囲
(1) 外国法人の課税方法は3つ
外国法人の課税方法は、法人税申告だけではなく、源泉徴収されるケースがあります。課税方法をまとめると、以下の3つとなります。
申告納税 | 法人税申告書で課税 |
---|---|
源泉徴収+申告納税 | 源泉徴収されたうえで、法人税申告書で課税 |
源泉分離課税 | 源泉徴収のみで課税関係が完了 |
(2) 外国法人は、法人税の規定と所得税の規定が適用
外国法人の場合、上記の申告納税(及び源泉徴収+申告納税)の対象となる取引は法人税上規定され、源泉分離課税の対象となる取引は、所得税の規定に従います。
(3) 外国法人の国内源泉所得とは?(法138条・法141条)
外国法人における「国内源泉所得」は、以下の 14種類となります。法人税法上規定されている国内源泉所得は、法人税法138条の1号~6号の「6つ」となります。上記の6つの他、所得税法上規定される源泉徴収取引が「8つ」あります(所161⑧~⑪、⑬~⑯)((7)~(12))(所212条)。
したがって、外国法人に課税される所得は、合計14種類となります。まとめると以下の通りです。(国税庁 源泉徴収のあらまし)
種類 | 内容 | 条文 | PEあり | PEなし | 源泉有無 |
---|---|---|---|---|---|
1号 | PE帰属所得(事業所得) | 法138条Ⅰ①~⑥ | 申告(※1) | - | 不要 |
2号 | 国内資産の運用又は保有による所得 | 申告(※1) | |||
3号 | 国内資産の譲渡による所得(※4) | ||||
4号 | 国内での人的役務の提供事業の所得(※5) | 源泉+申告(※2) | 20.42% | ||
5号 | 国内不動産の貸付による所得 | 20.42% | |||
6号 | その他の国内源泉所得 | 申告(※1) | 不要 | ||
(7) | 債権、預貯金等の利子等の所得 | 所161⑧ | 申告(※3) | 源泉 | 15.315% |
(8) | 配当等の所得 | 所161⑨ | 20.42% | ||
(9) | 貸付金利子等の所得 | 所161⑩ | 20.42% | ||
(10) | 使用料等の所得 | 所161⑪ | 20.42% | ||
(11) | 事業の広告宣伝の賞金の所得 | 所161⑬ | 20.42% | ||
(12) | 生命保険契約に基づく年金等の所得 | 所161⑭ | 20.42% | ||
(13) | 定期積金等の給付補填金等 | 所161⑮ | 15.315% | ||
(14) | 匿名組合契約に基づく利益の分配金 | 所161⑯ | 20.42% | ||
(※1)法人税の申告納税の対象(源泉徴収なし)
(※2)源泉徴収+法人税申告納税の対象
(※3)PEに帰属しない場合は、源泉徴収で完了
(※4)PE帰属所得以外は、令第281条第1項第1号~8に記載された資産譲渡に限定(国内土地、建物等、事業譲渡類似の株式等)
(※5)外国法人が役務提供の契約に基づき取得する所得。派遣される非居住者である個人が取得する所得は「給与所得」となるため(所161⑫)、ここには含まれない。
3. 源泉徴収が必要な取引
(1) 源泉徴収制度
特定の所得につき、その所得支払の際に、支払者が所得税を徴収して納付する制度。源泉徴収は、個人・法人問わず「課税対象となる一定の所得の支払」が行われる場合に必要となります。
(2) 源泉徴収される取引
源泉徴収制度の対象となる所得は、所得の受領者の区分ごとに、対象となる所得の種類が定められています。受領者区分ごとにまとめると、以下の3つとなります。
受領者には外国法人も含まれ、源泉徴収の対象は、個人か法人かは問いませんのでご留意ください。
受領者区分 | 所得の種類 |
---|---|
居住者 | ●利子・配当 ●給与、賃金、賞与及びその他類似の報酬 ●退職手当 ●一定の専門家に対する報酬・料金等 |
内国法人 | ●利子・配当 |
非居住者・外国法人 | 上記1・2参照 |
ただし、租税条約により、国内源泉所得につき免税とされる国もありますので、最終的に各国との租税条約を確認する必要があります。
(法第164条《非居住者に対する課税の方法》関係)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/23/01.htm
<
h3>