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1. 雇用調整助成金とは

売上が減少し、「事業活動の縮小」(=従業員を休業等させる)を余儀なくされた場合、雇用を維持する目的で、引き続き給与(休業手当)を支払った雇用主に対して、支給される助成金です。
 
今回は、雇用調整助成金(休業の場合)の概要と税務処理、最後に「新型コロナウイルス特例措置」についても、簡単にまとめます。


 

2. 支給金額

  • 「中小企業」は、賃金相当額等の2/3(「中小企業」以外は1/2)
  • 上限は、1人1日あたり8,330円
  • 初日から1年間で最大100日分、3年間で最大150日分の受給が可能
  • 教育訓練を実施した場合は、1人1日当たり1,200円が加算される

 

(「中小企業」の定義)

小売業(飲食店含む) 資本金5,000万円以下又は従業員50人以下
サービス業 資本金5,000万円以下又は従業員100人以下
卸売業 資本金1億円以下又は従業員100人以下
その他の業種 資本金3億円以下又は従業員300人以下

 

3. 主な要件

(1) 支給対象となる事業主

支給対象となる事業主の要件は、以下の要件すべて満たしている必要があります。
 

雇用保険の適用事業主
最近3ヶ月の平均売上高(or 生産量)が、前年同期より10%以上減少
最近3ヶ月の月平均雇用保険被保険者数等が、前年同期より10%超かつ4人以上増加していない(「中小企業」以外は5%超かつ6人以上増加していない)。
過去に同制度を受給している場合は、直前の対象期間満了後1年を超えている。

 
上記のほか、共通要件などがありますので、詳細は厚生労働省HPを参照ください。


 

(2) 対象となる労働者

雇用調整の対象となる雇用保険被保険者
ただし、被保険者期間が6か月未満の方や、退職願を提出した方、日雇労働被保険者など、一定の方は除かれます。詳細は厚生労働省HPを参照ください。


 

(3) 対象となる「休業」の要件

支給対象となる「休業」は、以下の要件すべてを満たしている必要があります。
 

労使間の協定(書面)によるものである。
休業等の期間が「対象期間(1年間)内」である。
休業等の延日数が、所定労働延日数の1/20(大企業は1/15)以上(休業等規模要件)。
休業手当の額が、労働基準法に違反せず、かつ平均賃金の6割以上。
所定労働日の全一日にわたって実施している( or 全従業員につき、一斉に1時間以上実施(短時間休業)の場合もOK )。


 

4. 受給までの流れ

受給を受けるには、「計画届」を都道府県労働局又はハローワークに提出します。
雇用調整の計画(休業等)は、生産計画や要員計画の見直しを行い、どのくらいの期間、何名が休業するのか、対象者の選定に偏りがないか、など具体的に記載します。
 
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5. 税務処理

(1) 休業手当支給時

通常の給与と同じ扱いになります(消費税不課税)。
源泉所得税、社会保険料、雇用保険等の取扱も、給与と同様に天引きします。


 

(2) 助成金受取時

法人税上は益金、消費税は不課税となります。
 

益金算入の時期 休業事実のあった日の属する事業年度
金額未確定の場合でも、見積額を未収入金で計上しないといけない点に注意
(賃金補填の位置づけのため)
益金算入の金額 受給額(受給額未確定の場合は、合理的な見積額)


 

6. 新型コロナウイルス特例措置

2020年3月に新型コロナウイルスが全国に蔓延し、多くの事業で雇用の悪化が発生しました。
これを受け、日本政府は、手続の簡素化及び要件緩和を行っています(2020年6月30日現在)。
 
従来の雇用調整助成金と比較すると、以下の通りとなります。
(対象期間:2020年4月1日~9月30日の休業)
 

通常 新型コロナウイルス関連特例措置
生産指標要件 最近3ヶ月の平均売上高(or 生産量)が前年同期より10%以上減少 1ヶ月5%以上の売上(or 生産量)低下
対象労働者要件 雇用保険被保険者が対象 雇用保険被保険者でない労働者も対象
(=緊急雇用安定助成金)
助成額上限
  • 賃金相当額等の2/3 (中小企業以外は1/2)
  • 1日1人あたり8,330円
  • 賃金相当額の4/5(中小企業以外は2/3)。解雇等を行わず、雇用を維持している場合 10/10(中小)、3/4(大企業)
  • 1日1人あたり15,000円
手続要件 計画届出書の提出必要 計画届出書の提出不要
被保険者期間要件 6か月以上の被保険者が対象 被保険者の期間要件なし
支給限度月数 1年100日、3年150日 4/1~9/30の休業は左記に含めずに判定可
休業要件
  • 短時間休業は全従業員一斉休業が必要
  • 休業規模要件1/20(大企業は1/15)
  • 短時間一斉休業要件緩和
  • 休業規模要件1/40(大企業は1/30)


 

7. まとめ

従来の雇用調整助成金は、手続が複雑で、かつ作成書類も多かったため、難易度が高いものでした。
今回コロナによる影響で受給要件が緩和され、手続も簡素化されています。
様々な給付金、補助金がある中の選択の一つとして参考にされてはいかがでしょうか。


 

8. 参照URL

(厚生労働省/雇用調整助成金)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html
 

(厚生労働省/雇用調整助成金(コロナ特例))

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
 

(給付金等の帰属の時期(法人税基本通達 2-1-42))

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_06.htm

 

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