No115【厚生年金・健康保険・介護保険】従業員が65歳以上(65歳・70歳・75歳)になった場合の社会保険の取扱いは?会社側の手続は?/雇用保険は?

 

最近は、定年年齢を「65歳」とする会社も多くなりましたが、65歳以降も、職場で仕事を継続される方や、新たな職場に転職される方も多いです。
こういった65歳以上の方が「会社員」として勤務する場合、勤務先の社会保険に加入する必要はあるのでしょうか?また、加入する場合、何歳まで加入が必要なのでしょうか?

今回は、65歳以上の方の社会保険の取扱いにつき、厚生年金・健康保険・介護保険・雇用保険に分けて解説します。

 

1. 65歳以上でも社会保険に加入しなければいけないのか?

(1) 厚生年金・健康保険は加入必要

65歳になると年金の支給が始まるため、厚生年金・健康保険に加入する必要はないのでは?と勘違いされる方も多いです。
しかし、65歳以上でも、会社に勤務される場合は、年金受給の有無に関わらず、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入しなければいけません
「厚生年金」と「健康保険」はセットですので、どちらか一方だけ加入することも認められません。

 

(2) 介護保険は天引き終了

65歳以上で会社に勤務する場合、介護保険については、65歳時点で給与からの天引きはなくなります。ただし、給与天引きがなくなるだけで、介護保険の支払が終了するわけではありません。
介護保険の種類が変わり、65歳からは、給与天引きではなく、老齢年金からの引落に変わります。

介護保険は大きく、①第1号被保険者(65歳以上)②第2号被保険者(40歳~65歳まで)に区分されます。②は、医療保険料と一体徴収されるため、会社員の方は給与から天引きされます。一方で、①は、65歳から受給が始まる老齢年金からの徴収となりますので、65歳で会社の給与からの天引きはストップします。

 

65歳以上(第1号被保険者) 40歳~64歳(第2号被保険者)
保険料の支払 老齢年金から天引き 給与から天引きor健康保険料と一緒に納付
受給条件 一定の介護状態の場合
(要介護、要支援状態)
要介護(要支援)状態が、16の特定疾病の場合のみ

 

なお、第2号被保険者の配偶者(被扶養者)の介護保険料は、第2号被保険者が支払う「介護保険料」に含まれますので、支払が免除されています。

この点、被保険者が65歳退職時点で、配偶者は65歳に達していないケースもあります。こういった場合、被保険者が原則として国民健康保険に切り替わりますので、この時点から配偶者の介護保険の負担が発生します。
ただし、被保険者が、65歳以降も引き続き勤務を継続し、勤務先の厚生年金の被保険者の立場であれば、被保険者が支払う「介護保険料」に含まれ、引き続き支払は免除されます(協会けんぽ以外の特定被保険者は除く)。
なお、上記の場合でも、配偶者自身が65歳に達した時点からは、配偶者自身が第1号被保険者となり、配偶者自身の年金から介護保険料を納めることになります。

 

【まとめ】

保健の種類 65歳に到達
厚生年金・健康保険 65歳以降も継続加入、手続きは特になし
介護保険 第2号被保険者期間満了、給与からの天引きは終了

 

2. 70歳到達時の社会保険の取扱い

(1) 厚生年金被保険者の資格喪失

社会保険に加入している従業員が、70歳を迎えると、厚生年金の被保険者資格を喪失します。一方、70歳に達した場合でも、健康保険の被保険者の資格は継続します。
したがって、事業者側は、70歳の誕生日前日が属する月から、厚生年金保険料を給料から徴収する必要がなくなり、その後は、健康保険料のみが徴収対象となります。

 

(2) 70歳到達時の資格喪失手続

事業者は、従業員が70 歳になった日から5日以内に、原則として「厚生年金保険被保険者資格喪失届70歳以上被用者該当届(「70歳到達届」)」を年金事務所に提出する必要があります。ただし、引き続き同一の事業者に使用される被保険者で、標準報酬月額に変更がない場合は、提出が不要です。

 

(3) 70歳以降の厚生年金の任意加入は?

原則として、厚生年金の加入年齢上限は70歳ですが、70歳になっても「年金受給権」が発生しない方の場合、例外的に、年金受給権を得るまで、厚生年金に任意加入できる特例制度があります(高齢任意加入制度)。

 

3. 75歳到達時の社会保険の取扱い

(1) 健康保険被保険者の資格喪失

社会保険に加入している従業員が、75歳を迎えると、健康保険の被保険者資格も喪失します。これは、現行の社会保障制度上、75歳到達日より後期高齢者医療制度の被保険者となるためです。後期高齢者医療制度に移行すると、健康保険料は、年金より天引きされることになります。

 

(2) 75歳到達時の資格喪失手続

事業者は、従業員が75歳になった日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を年金事務所へ提出する必要があります。
協会けんぽの場合の「添付書類」は次の通りです。

 

【添付書類】
①健康保険被保険者証(本人分および被扶養者分)
②(交付されている場合のみ)高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証

 

なお、組合管掌健康保険(「組合健保」)の被保険者の場合の添付書類は特にありません。

 

4. 雇用保険の取扱いは?

雇用保険については、加入対象年齢の上限が撤廃され、①週の所定労働時間が20時間以上かつ②31日以上の雇用見込がある65歳以上の労働者は、「高年齢被保険者」として雇用保険の加入が必要です。

 

5. まとめ (イメージ図)

イメージ図

 

6. ご参考~社会保険料資格喪失のタイミング~

厚生年金・健康保険は、どちらも「従業員の誕生日」を起算としておりますが、「資格喪失日」の取扱いが微妙に異なりますので、注意が必要です。

 

70歳到達時(厚生年金被保険者資格喪失) 誕生日の前日が「資格喪失日」
70歳到達時(健康保険被保険者資格喪失) 誕生日が「資格喪失日」

 

社会保険料は、「資格喪失日」が属する月の前月分まで納める必要がありますので、例えば月初が誕生日となる従業員は、保険料の徴収を停止するタイミングが変わってきます。

 

【例 4月1日が誕生日の従業員・社会保険翌月徴収を前提】

資格喪失日 保険料最終発生 保険料徴収停止時期
70歳到達時(厚生年金被保険者資格喪失) 3/31(誕生日前日) 2月分 3月分
75歳到達時(健康保険被保険者資格喪失) 4/1(誕生日と同日) 3月分 4月分

 

7. 参照URL

従業員が70歳になったとき

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/hihokensha/20140218.html 

従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20150407-02.html 

平成31年4月から被保険者の70歳到達時における資格喪失等の手続きが変更となります

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2019/2019031501.html 

70歳以上の人が厚生年金保険に加入するとき(高齢任意加入)の手続き

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/koureininni.html 

 

8. Youtube

 
YouTubeで分かる「厚生年金・健康保険・介護保険」
 

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