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例えば、奥様がパート等により年収130万円以上になった場合、社会保険の扶養から外れるケースがあります。
この場合、奥様自身は、国民健康保険、国民年金に加入する必要があります。

年間収入130万円については、「過去の収入での判定」ではなく「今後1年間の収入見込額」で判断するため、いつから扶養が外れるのか?判定に迷うケースが多いです。

そこで今回は、社会保険の扶養に入ることができる要件や、「130万円基準」の収入の範囲、判定時期等につき解説します。(以下、扶養に入ることができる方を「被扶養者」と略します)

 

1. 「被扶養者」の要件

(1) 要件は3つ

健康保険の「被扶養者」となれる要件は、以下の3つすべて満たす場合です。
「所得税の扶養要件」とは全く異なりますので、注意しましょう。

本人が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入していない 被扶養者自身が、お勤め先などの社会保険に加入していないことが条件となります。
本人の年間収入 130万未満 本人の年間収入が130万円未満であれば「被扶養者」となれます。
(60歳以上 or 障害者の方は、年間収入180万円未満まで拡大されています。)
対象となる親族 被扶養者となれる方は、「配偶者」と「3親等内の親族」です。
また、社会保険は税法と異なり、法律的には親族ではない「内縁関係の配偶者」も被扶養者になれる点が特徴です(「内縁関係の配偶者の父母及び子」も含まれます)。

 

(2) 対象となる親族の要件は異なる。

対象となる親族は、それぞれの親族で要件が異なります。以下となります。
 

① 配偶者(内縁配偶者含む)・子・兄弟姉妹及び直系尊属(父母・祖父母など)の場合

同居、別居は問いませんが、それぞれの区分により、被扶養者の「年収要件」に違いがあります。
 

被扶養者の年収要件
同居の場合 原則として、被保険者の1/2未満(※)
別居の場合 被保険者からの仕送り額に満たないこと

(※)収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合でも、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときで、日本年金機構がその世帯の生計の状況を総合的に勘案して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。
 

② 上記以外(叔父伯母・内縁の配偶者の父母・子など)の場合

「同居」が要件となります。
被扶養者の年収要件は、上記①「同居の場合」と同様です。

なお、上記①②とも共通ですが、年齢は「75歳未満の者」に限られます
(75歳以上になると、後期高齢者医療制度により、ご自身で健康保険に入らなければならないため。)

 

2. 扶養から外れる130万円基準とは?

(1) 社会保険上の収入の範囲

「年間収入」は、恒常的な収入で判定し、一時的な収入は含まれません
また、社会保険の扶養を判断する「収入の範囲」は、所得税とは異なります。
所得税上「非課税」のものでも、社会保険上は「収入」に含まれるものもありますので、注意が必要です。

「恒常的な収入」を例示すると、以下となります。
 

収入に含まれるもの 摘要
給与収入 通勤手当が含まれる
年金収入 老齢年金、遺族年金、障害年金、企業年金等
雇用保険・労災保険給付金 失業保険・傷病、障害・遺族補償給付等
健康保険給付金 傷病手当金・出産手当金等
事業所得・不動産所得 年間売上 ‐ 必要経費 ⇒ 減価償却費と青色申告控除額は除く
配当収入、利子収入など 定期的に利子収入等を得ている場合

 

【一時的な収入の例】

●保険の満期返戻金・解約返戻金で一括受取のもの(分割して複数年受給する場合は×)(日本年金機構HP)
●健康保険の出産育児一時金・家族出産育児一時金
●不動産譲渡所得や、宝くじ当選金等の一時所得は、対象外になるものと思われます。
 

(2)  年間収入の判定時期

社会保険被扶養者の要件となる「年間収入130万円」は、過去の収入ではなく、被扶養者に該当する時点や認定日以降の「年間の見込収入額」のことをいいます。
(給与収入がある場合は、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合は、日額3,611円以下。)
 
なお、所得税の場合は、過去の暦年(1~12月)所得で判定しますので、収入の集計期間は、社会保険と所得税で大きく異なります。

被扶養者に該当するかどうかの実務上の判定は、各健康保険組合などにゆだねられていますが(健康保険法第39条)、実務上の判定基準を例示します(協会けんぽでは判定基準は開示されていない)。
 

状況が変わらない場合 ●前年の年収130万円以下の場合
●直近3カ月の収入×4で推定
●1か月で月収108,333円を超えた場合
●3カ月平均で月収108,333円を超えた場合
状況が変わった場合
(退職・転職等)
●退職書類、雇用契約書、廃業届等で状況が変わったことを確認し、状況が変わった後の収入で判定。
●今後退職予定や、期間雇用で更新予定がない場合でも、その時点の収入を1年換算した金額で判定するケースが多い。

判定は、源泉徴収票、給与明細等、客観的な資料で判定します。
なお、一時的な収入だけで、扶養が外れることはないようです(令和2年4月10日事務連絡)。例えば、たまたまバイトのシフトが多く、直近3カ月の収入を年収換算すると130万円以上となる場合でも、直ちに被扶養者認定が取り消されるわけではありません。少なくともその年の扶養は取り消されないことが多いです。

 

【状況が変わった場合の判定例】

ケース 扶養可否
8月末まで無職で収入ゼロ。9月から就職し、毎月15万の給料あり 9月就職以降、1年間の見込収入は180万円のため(=月額108,333円を超える)、扶養の要件を満たしません。
所得税の場合は、1~12月末までの収入60万円で判定するため「扶養」になる ⇒結論が異なる点、注意
1月~10月末までの給料は300万円。10月末に退職し、11月以降は無職 10月末退職以降、1年間の見込収入はゼロ円のため(130万未満)、退職時点で「扶養」の要件を満たします。
所得税の場合は、1~12月末までの収入300万円で判定するため「扶養」にならない ⇒結論が異なる点、注意
1か月有期雇用契約のみの場合(更新予定なし月額20万円) 実務上は、「その時点での契約による収入を1年換算した金額」で判定するケースが多いです。この場合は、20万円×12ヵ月=240万の収入で判定し、扶養の要件を満たしません。
・半年後に退職予定の場合(再雇用予定なし、月額20万) 上記同様、「その時点での契約による収入を1年換算した金額」で判定するケースが多いです。この場合は、20万円×12ヵ月=240万の収入で判定し、扶養の要件を満たしません。

 

3. 扶養を外れる場合はばれるのか?外れた場合の影響・手続

例えば、協会けんぽの場合、少なくとも年1回は、保険者が被扶養者の要件を満たしていることが確認しますので、この時点でばれる可能性はあります。
扶養から外れた場合は、国民健康保険・国民年金に加入する必要があります
(国民年金は20歳以上60歳未満の方のみ)。
 
また、扶養を外れた場合、①事実確認日に扶養が取り消されるケースと、②事実発生日に遡って扶養が取り消されるケースがあります。例えば、勤務先の健康保険証で医療機関等で受診していた場合、医療費の追加請求があるケースがあります。なお、被扶養者の認定を取り消されたとしても、強制的に国民健康保険に加入になりますので、自己負担3割を超えた部分は、後々、国民健康保険で医療費の請求が可能です。
 

4.  【2022年10月改正】106万の壁

勤務先の会社の従業員数によっては、年収130万ではなく、月額8.8万円以上(年収105.6万円)で社会保険に加入義務が生じるケースがあります。以下の通りです。

従業員数(※1) 加入要件(すべて満たす場合)
現行 従業員数101人以上 ●週の所定労働時間が20時間以上
●月額賃金が8.8万円以上
●2カ月以上の雇用見込(※2)
●学生ではない
2024年10月~ 従業員数51人以上

(※1)従業員数にかかわらず、労使合意の場合は社会保険加入が可能です。
(※2)2ヶ月以内の雇用契約でも、「更新」が明示or同じ事業所で更新実績がある場合は除きます。
 

5. ご参考 厚生年金の扶養要件は?

厚生年金の扶養(厳密には国民年金の第三号被保険者)に入ることができれば、「20歳以上60歳未満の方」に義務付けられている「国民年金」の支払も免除されます。
 
この、厚生年金の「被扶養者」の対象も、基本的には上記「健康保険の被扶養者」と同じ考え方となりますが、厚生年金の場合は、被扶養者になれる方が「配偶者」に限定される点が異なります。
 
例えば、20歳以上のお子様や60歳未満の親などは「厚生年金の扶養対象」にはなれませんので、ご自身で国民年金を支払わないといけない点に注意が必要です。
(国民年金は、所得・年齢条件を満たせば「免除」される場合もあります。)

 

6. 参照URL

(従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き)

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html

日本年金機構疑義照会回答(厚生年金保険 適用)被扶養者届 整理番号8・11(P27・28)

https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/tekiyou.pdf

(令和2年4月10日 事務連絡)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200427S0180.pdf

 

7. YouTube

 
YouTubeで分かる社会保険の扶養に入れる条件