No231.【事例付】法定内残業・法定外残業の違い/法定休日・法定外休日の違い/残業単価・休日出勤単価・深夜単価を徹底比較!
「所定労働時間」を超えて勤務した場合、「残業手当」が支給されます。
また、休日出勤した場合には「休日出勤手当」が支給されることもありますね。
これらの「手当」の存在は知っていても、時給単価の算定方法は、意外と知らない方が多いかもしれません。
今回は、残業・休日出勤単価の算定方法を解説します。
目次
1. 残業の種類
(1) 法定内残業と法定外残業
残業には「2種類」あります。
「法定内残業」と「法定外残業」です。
労働基準法では、原則「1日8時間、1週間で40時間」を法定労働時間としています。
したがって、「法定内残業」「法定外残業」の定義は、以下の通りとなります。
法定内残業 | 1日8H、週40Hを超えない範囲で行われる残業 |
---|---|
法定外残業 | 1日8H、週40Hを超えて行われる残業 |
(※)法定外残業を行う場合には、労働基準監督署に届出が必要です。
「法定内残業」というのは、会社との雇用契約書に明記されている「所定労働時間」を超えた残業のことです。
「所定労働時間」は8Hとは限りません。
(2) 具体例
例えば、週5、9時~17時(1時間休憩)の会社の場合、そこで働くAさんの「週所定労働時間」は、7H × 5日 = 35Hとなります。
仮に、Aさんが残業しても、1日8時間、週40時間を超えなければ「法定内残業」ということになります。
(3) 実務上の留意事項
法定内残業については、「割増賃金」を支払う必要はありません。
意外とこのルールを知らずに、「割増賃金」を支払っている会社もあるかもしれません。
ただし、就業規則上、「法定内残業も割増賃金を支払う」と記載している場合は、就業規則で定めている以上、割増賃金を支払わないといけません。
法律では求められていないのに、「就業規則」で定めていることが原因で、余分に支払わないといけない、という場合がありますのでご留意下さい。
2. 休日出勤の種類
(1) 法定休日出勤と法定外休日出勤
休日出勤も、残業同様2種類あります。
「法定休日出勤」と「法定外休日出勤」です。
労働基準法では、「週1日 or 4週間で4日」に合致する休日のことを「法定休日」としています(労働基準法35条)。
したがって、「法定休日出勤」と「法定外休日出勤」の定義は、以下の通りとなります。
法定休日出勤 | 週1日 or 4週間で4日を超えて行われる休日出勤 |
---|---|
法定外休日出勤 | 週1日 or 4週間で4日を超えない範囲で行われる休日出勤 |
例えば、「月~金勤務、土日休み」の会社で、土曜日出勤したとしても、労働基準法に定められている「法定休日出勤」にはなりません。
この場合、土曜日出勤は「法定外休日出勤」、日曜日の出勤は「法定休日出勤」となります。
(2) 実務上の留意事項
「法定外休日」に出勤した場合、原則として休日労働割増賃金の支給はありません。
なお、労働時間が週40時間を超えた部分については、「法定外残業」となりますので、法定外残業の割増分は支払われます。
例えば、土曜日が法定外休日(=所定休日)を前提とすると、土曜日出勤の時間も、週40時間を超えるかどうか?で判定します。
例えば、先ほどの例題のAさんが、月~金7時間勤務、土曜日に7時間働いた結果、42時間になった場合も、法定内残業5時間、法定外残業2時間となります。
一方、法定休日の日曜日に働いた場合は、休日労働となるため、1.35倍の割増賃金が発生することになります。
つまり、「法定外休日出勤」の割増支給の有無は、あくまで、上記1.でお伝えした「法定内残業」「法定外残業」の判定に基づいて決定される、ということになります。
土曜日も休日だから「割増残業を支払わないといけない」という、単純な判断ではない点にご留意ください。
なお、現実的には、法定休日と法定外休日(所定休日)をあまり区分していない会社も多いかもしれません。労働基準法では、法定休日を特定する必要まではないとされていますNo231したがって、会社によっては、休日に勤務しても、法定休日労働とならず、1.35倍の割増賃金とならないこともある点、注意が必要です。
3. 割増賃金の計算方法
「法定外残業」、「法定休日出勤」については、割増賃金を払う必要があります。
割増率は以下の通りとなります。
法定外残業の割増率(※) | +0.25 |
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休日労働の割増賃金の割増率 | +0.35 |
(※)月60時間超の時間外労働については、超えたHにつき+0.5(令和5年4月1日以降中小企業にも適用されます)。
(1) 法定外残業の単価計算
月60時間を超える時間外労働については、超えたHにつき ×1.5倍(令和5年4月1日以降中小企業にも適用されます)。
(2) 法定休日出勤の単価計算
4. 深夜残業の割増単価は?
残業のうち、「深夜残業」については、上記よりもさらに高い割増率となります。
その日の労働時間が8時間を超えており、かつ労働時間が、夜22時~翌朝5時の間に働いている場合は「深夜残業」となります。
「深夜残業」については、平日、休日にかかわらす、一律、通常の残業に加え「+0.25」の割増率が加算されます。
深夜残業割増率 | +0.25(=法定外残業と合わせると+0.5) |
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法定休日の深夜残業割増率 | +0.25(=法定休日出勤と合わせると+0.6 ) |
なお、管理職(管理監督者)については、「通常の残業手当」はありませんが、「深夜残業割増」については支払う必要がある点にご留意ください。
5. 「1時間あたりの賃金」算定方法
1時間当たりの賃金(基礎時給)は、以下の方法で算定します。
- 1月平均所定労働時間は、雇用契約で定められている1ヶ月あたりの平均労働時間(一般的に170時間前後が多い)。
- 月給には、役職手当・職務手当・地域手当・調整手当などは含みますが、家族手当・通勤手当・住宅手当・残業手当・深夜手当などは含みません。
6. 具体例
- 月給231,000円(基本給201,000円、役職手当20,000円、通勤手当10,000円)
- 1ヶ月の平均所定労働時間は、170時間とする。
(1) 1時間あたりの賃金(基礎月給)
221,000円(基本給201,000円 + 役職手当20,000円)÷ 170時間 = 1,300円
(2) 残業単価の計算
① 法定外残業(深夜以外)
1,300円 × 1.25倍 = 1,625円
② 法定外残業(深夜)
1,300円 ×( 1.25倍 + 0.25倍)= 1.950円
③ 休日出勤
1,300円 × 1.35倍 = 1,755円
④ 休日出勤(深夜)
1,300円 ×( 1.35倍 + 0.25倍)= 2,080円
7. ご参考~法定休日に出勤、かつ代休を取得した場合~
例えば、日曜(法定休日)に労働し、後日、平日に代休を取得した場合、残業代の取扱いはどうなるでしょうか?
この場合、後日代休を取得したとしても、法定休日に労働したことには変わりないため、法定休日の割増賃金率で計算した残業代を支給する必要があります(代休日の通常賃金分は支給額から控除)。
8. 参照URL
(厚生労働省 労働時間・休日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
(厚生労働省 時間外労働の限度に関する基準)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000123090.pdf
9. YouTube
YouTubeで分かる「残業単価と休日出勤単価・深夜単価」の違い!