No259【育休休業給付金・出生時育児休業給付金】出産でもらえる一時金や養育でもらえる児童手当とは?
「育児」で仕事を休業する場合、休業期間中は無給や減給になる場合が多いです。こういった場合、休業期間中の「生活を補償」することを目的に、「育児休業給付金」という「雇用保険法上の制度」が認められています。
要件を満たせば、女性だけではなく、男性も支給対象となります。
今回は、「育児休業給付金」の概要や要件、支給額を中心にお伝えします。
目次
1. 育児休業給付金支給の要件
(1) 育児休業給付金とは?
「育児休業給付金」とは、雇用保険法の被保険者が、1歳に満たない子を養育するために、「育児休業」を取得した場合に受け取れる給付金です。雇用保険加入者が対象となるため、フリーランスの方など雇用保険被保険者でない方は対象外となります。
(2) 受給者の要件
「育児休業給付金」を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。
① | 育児休業開始日前2年間に、11日以上(or就業時間数80時間以上)働いた月数が12か月以上。 |
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② | 育児休業期間中に、毎月、休業開始前の月額賃金の8割以上の賃金が支払われていない。 |
③ | 育児休業期間中の就業日数が1ヵ月ごとに10日以下(or80時間)以下。 |
● 「有期雇用労働者」の場合は、上記に加えて、「同一事業主のもとで、1年以上継続勤務、かつ、原則として、子が1歳6ヵ月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」が必要となります。
● 育休手当は、職場復帰を前提とした制度のため、退職予定がある場合は、支給対象となりません。
2. もらえる期間は?
原則、1歳の誕生日の前々日まで支給されますが、支給開始時期は女性と男性で異なります。女性の場合は、出産日から起算して58日目(産後休暇後)、男性は出生当日から支給開始されます。
なお、支給は「育休の取得日数」を対象としているため、例えば、自己都合で「育休取得日数」を短縮すると、育休手当の支給期間も短縮されます。
(1) 支給が延長されるケース
雇用継続のために特に必要と認められる場合は、1歳6カ月ないし2歳まで支給が延長されます。以下のケースです。
● 保育所申込済だが、1歳(or1歳6カ月)になっても入所ができない場合
(保育所待機児童)。
● 子の主たる養育者が死亡、負傷、疾病、身体上・精神上の障害により、子の養育が困難な状態に陥ったとき。
● 離婚などの事情により、配偶者が子と同居しないことになったとき。
● 6週間(双子など多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定である。または8週間の産前産後休暇の期間にかかるとき。
(2) ご参考~パパ・ママ育休プラス制度~
「パパ・ママ育休プラス制度」とは、男性の育児休業取得を促す目的で、父母ともに育児休業を取得する場合、休業取得期間を延長できる制度です(育児・介護休業法)。当該「パパ・ママ育休プラス制度」を利用すれば、上記の延長要件を満たさない場合でも、父母とも「1歳2か月」になるまで育休を取得し、かつ育児休業給付金受け取ることができます。両親交代で育児休業を取ることで、家庭の事情に合わせて、夫婦で協力して子育てに取り組むことができます。
3. 支給額
育児休業給付金は、「休業開始時の賃金」をベースに計算されます。
支給単位期間は原則30日となります。なお、支給単位期間の途中で退職した場合は、喪失日の属する支給単位期間の前の支給対象期間までが支給対象となります。
(1) 支給額
育児休業給付額は以下の計算式で求められます。
180日目に達するまで | (休業開始時賃金日額)× 30日(※) × 67% |
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181日目以降 | (休業開始時賃金日額)× 30日(※) × 50% |
(※)最後の支給単位期間は、30日ではなく、最終支給単位期間の日数となります
「休業開始時賃金日額」は、原則、以下で算定します。
(※)賃金支払基礎日数が11日未満の賃金月は除きます。
【具体例】
休業開始時賃金日額=30万円×6カ月÷180日=1万円
【支給額】
180日目に達するまで | 1万円×30日 × 67%×6カ月=1,206,000円 |
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181日目以降 | 1万円×30日×50%×6カ月=900,000円 |
合計 | 2,106,000円 |
(2) 育児休業期間中に賃金が支払われた場合
支給単位期中に就業した場合は、申告が必要です。就業日が10日超(かつ就業時間80時間超)の場合、育児休業給付金は支給されません。また、育児休業期間中に賃金が支払われた場合は、育児休業給付金が減額支給される場合もあります。以下の通りです。
【180日目まで】
支給された月額賃金 | 育児休業給付金 |
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賃金月額の13%以下 | 全額支給 |
賃金月額の13%超80%未満 | 賃金月額×80%-実際賃金額 |
賃金月額の80%以上 | 不支給 |
(※)賃金月額(休業開始時賃金月額)=休業開始時賃金日額×30日
【181日目以降】
支給された月額賃金 | 育児休業給付金 |
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賃金月額の30%以下 | 全額支給 |
賃金月額の30%超80%未満 | 賃金月額×80%-実際賃金額 |
賃金月額の80%以上 | 不支給 |
【具体例】
● 180日に達するまでの1支給期間単位の支給額とします。
休業中に支給された給与(月額) | 支給額 |
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賃金支払なし | 30万×67%(減額なし)=201,000円 |
月賃金6万円支払の場合 | 30万円×80%-60,000円=180,000円 |
月賃金24万円支払の場合 | 支給なし(80%以上のため) |
4. 申請期限・方法
期限は、休業開始日から4カ月経過後の月末となります。期限を過ぎると交付が受けられない点には注意が必要です。
また、支給申請は1回では終わりません。1回目の申請の後、2回目以降は、基本的には、2か月単位で支給の申請を行います。
【必要書類】
① 育児休業給付受給資格確認票(1回目のみ)
② 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(1回目のみ)
③ 母子手帳など育児の事実を確認できる書類(1回目のみ)
④ 育児休業給付金支給申請書
⑤ 賃金台帳、出勤簿等、上記に記載する賃金等を証明できる書類
なお、受給者側への初回給付金の入金は、出産日から約4~5カ月後、その後は、2カ月に1回、2か月分まとめて支給されます。
支給回数
「育児休業給付金」は、同一の子であっても、原則2回の育児休業までは給付金を受け取ることができます(2022年改正)。但し、保育所待機児童等、例外事由に該当する場合は、回数制限が除外され、3回目以降も支給されます。
5. 育児休業給付金の税金・社会保険
育児休業給付金は、税法上は非課税扱いとなり、所得税等は課税されません。また、雇用保険、社会保険も非課税です。なお、なお、産前産後休業期間中及び育児休業等期間中は、年金事務所に申し出することにより、事業主・被保険者ともに社会保険料が免除となります(最大子が3歳になるまで)。
6. 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
雇用保険法上、育児休業給付金とは別に、「出生時育児休業給付金(産後パパ育休)」という給付金もあります。子の父が、子の出生日から起算して8週間以内に、最大4週間を限度に産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合に、一定要件のもと、「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができます。
支給要件・支給額とも、育児休業給付金と近い内容になっています。
支給要件 | ● 育児休業開始日前2年間に、11日以上(or就業時間数80時間以上)働いた月が12か月以上。 ● 休業期間中の就業日数が、最大10日(or 80時間) 以下 ⇒育児休業給付金同様、「有期雇用労働者」は、追加要件あり。 |
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支給額 | 休業開始時賃金日額×休業日数(上限28日)×67% ⇒育児休業給付金同様、休業期間中に就業した場合の賃金制限あり。 |
申請期限 | 子の出生日(出産予定日前に出生した場合は出産予定日)から起算して8週間経過日の翌日から申請可能。 ⇒上記日から起算して、2か月経過日の属する月末が提出期限。 |
7. その他の給付金
子供の出生や養育に関しては、雇用保険法以外にも、各種の一時金や手当があります。例えば、子供が生まれた際の出産育児一時金・出産手当金(健康保険法)、養育の際の児童手当・児童扶養手当(児童手当法)などがあります。
(1) 出産に関する給付金(健康保険法)
出産育児一時金 | 出産費用補助として、健康保険法により出産育児一時金が支給されます。原則として、子ども1人あたり50万円支給されます(※)。(双子などの場合は、50万円×子どもの人数分が支給)。 |
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出産手当金 | 産前産後休業(出産日以前42日~出産日翌日以降56日まで)の範囲内で、給与の支払がなかった期間が対象となります。1日あたりの支給額は、「支給開始日月以前12か月の平均標準報酬月額」÷30×2/3相当額となります。 |
(※)産科医療補償制度未加入医療機関の場合は、1人当たり48.8万円。
(2) 養育に係る給付(児童手当法・児童扶養手当法)
2024年6月に子育て支援法が成立し、児童手当、児童扶養手当が拡充されます。
児童手当 | 「児童」を養育している場合には「児童手当」が支給されます。
2024年12月支給分より、以下に拡充されます。 |
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児童扶養手当 | ひとり親世帯の場合は、上記の「児童手当」の他、「児童扶養手当」が支給されます。
2025年1月支給分より、以下に拡充されます。 |
8. 参照URL
(厚生労働省Q&A 育児休業給付)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
育児休業給付の内容と支給申請手続
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001126859.pdf
就業期間中の賃金支払
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000178877.pdf
出産育児一時金
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3280/r145/
出産手当金
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/
児童手当(神戸市)
https://www.city.kobe.lg.jp/a32986/kosodate/shien/support/b016/index.html
児童扶養手当(神戸市)
https://www.city.kobe.lg.jp/a32986/kosodate/shien/family/teate/jifute.html
こども家庭庁 子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案の概要
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ba94b64b-731f-4f48-97ba-b54a76b0aeb6/a528abca/20240216_councils_shienkin-daijinkonwakai_03.pdf
9. Youtube