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個人の方が不動産(土地・建物)を売却した場合、「資産を譲渡した日」に譲渡所得の確定申告を行います。
この「譲渡した日」は、契約日?あるいは実際引渡日?どちらを指すのか疑問が生じます。
また、実際譲渡した場合でも、赤字の場合など、「申告義務」が生じないケースもあります。

そこで今回は、不動産「譲渡所得」計上時期に関する所得税上の規定や、譲渡所得はいくらから申告が必要か?申告不要なケースにつき解説します。

 

1.譲渡所得の算定式

譲渡所得の算定式は、以下となります。
 
譲渡所得 = 譲渡収入 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
 
マイホーム売却の3,000万円の特別控除がある場合は、特別控除額を差し引きます。
 

2.譲渡所得を認識する日は?

譲渡所得は、「資産を譲渡した日」に認識し、確定申告を行います。また、「資産を譲渡した日」とは、原則として、「資産を引き渡した日」となりますが、売買契約の効力発生日(契約日)も認められます(所基通36-12)。
 

3.どちらが得なのか?

一般的には、「契約日」よりも「引渡日」の方が遅いため、引渡し日が年をまたぐ場合は、「引渡日」で計上する方が、所得税を支払うタイミングを遅らせることが可能です。
しかし、場合によっては、「売買契約日」に計上した方がお得なケースもあります。

「契約日」「引渡日」それぞれがお得なケースは以下の通りとなります。

 

「引渡日」がお得なケース ●譲渡所得の税率は、所有期間が5年超(長期)か5年内(短期)かで税率が異なります。当該5年の判定は、譲渡した年の1月1日時点の「所有期間」で判定しますので、例えば、「契約日」で譲渡所得を認識すると5年内となるが、「引渡日」で判定すると5年超になるケースがあります。こういった場合は、「引渡日」で認識する方がお得です。
「契約日」がお得なケース ●譲渡益や譲渡損の「各種特例」との関係で、「契約日」で申告する方がお得なケースがあります。例えば、「マイホーム売却益の3,000万円控除や、所有期間10年超の軽減税率、や、マイホーム譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は、「居住しなくなって3年経過日の属する年の12月31日までに譲渡」という要件があります。したがって、当該特例との関係で、早めの「契約日」をベースに譲渡所得を計上するケースも考えられます。

 

4.申告不要なケースは?

不動産を譲渡した場合でも、必ず確定申告が必要なわけではありません。
「譲渡収入-譲渡費用-取得費=ゼロ以下」、つまり譲渡所得がマイナスの場合は、確定申告の必要はありません。また、基礎控除等の各種控除を差し引いた結果、所得が生じない場合は、確定申告は不要となります。

ただし、不動産譲渡に関する、下記のような「各種特例」を利用する場合は、確定申告が必要となります。
マイホーム売却益の3,000万円の特別控除の特例
マイホーム譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例

なお、総合課税の譲渡所得(動産等の譲渡)の場合、50万円の特別控除が認められていますが、不動産の場合は50万円の特別控除はありませんので、ご留意ください。

 

5.資産の取得日は?

なお、譲渡対象の不動産を購入した時期については、上記の譲渡日の規定に準じて判定することとされています(所基通33-9)。したがって、原則的には引渡日が取得日となり、納税者の選択により売買契約締結日を取得日と判定することも可能です。
 

6.参照URL

(所基通36-12  山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm

(所基通33-9 資産の取得の日

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm

7.Youtube

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YouTubeで分かる「不動産譲渡所得の申告時期」