No189.仮想通貨取得・売却等の具体的計算方法
最近、ビットコインなどの仮想通貨が流行っていますね。
仮想通貨も通貨の一種ですので、物やサービスの購入は可能です。
また、仮想通貨そのものの売却や交換により利益(雑所得or事業所得)が生じますので、FXのように投資目的で買われる方も多いです。
そこで、今回は、仮想通貨の購入、売却、交換等の場合に、具体的にどういう形で利益(=所得)を計算するのか?をまとめます。
1.税務上の取扱い
税務上は、「仮想通貨に関する所得の計算方法について」という通達に基づき、処理を行います。
商品購入時、売買・交換時等の取り扱いをまとめると、以下の通り。
(1)仮想通貨購入時の取得価額
購入価額(手数料含む)で処理。所得は生じない。
(2)仮想通貨売却時の所得額
所得金額 = 売却価額 - 取得価額
(3)仮想通貨での商品購入時の所得
所得金額 = 商品価額 - 取得価額
(4)仮想通貨同士の交換時の所得
所得金額 = 他の仮想通貨の時価(購入価額) - 取得価額
(5)仮想通貨追加購入時の取得価額
原則 移動動平均法(例外 総平均法)
2.具体例
上記の「仮想通貨に関する所得の計算方法について」では、所得の計算方法等についての定めはありますが、「会計処理」や「勘定科目」までは定められていません。
中小企業を前提に、税務仕訳を行う場合は、現状は、以下のような会計処理かなと思います。
(「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」はここでは無視。税法の取扱いを前提とした仕訳です)
以下、具体例で説明します(仕訳例は、私見です)。
(1)仮想通貨購入
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮想通貨(資産・BTC) | 2,000,000 | 現金 | 2,000,000 |
- 購入時は、購入金額(手数料含む)で資産計上する。
(2)仮想通貨売却
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 110,000 | 仮想通貨(資産・BTC)(※1) 仮想通貨売却益(※2) |
100,000 10,000 |
- 売却時は、売却損益(=所得)が計上される。
(※1)売却原価の計算
2,000,000円 ÷ 4BTC ×0.2BTC = 100,000円
(※2)売却益(=所得)の計算
110,000円 – 100,000円 = 10,000円
(3)仮想通貨での商品交換
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
商品 | 155,000 | 仮想通貨(資産・BTC)(※1) 仮想通貨売却益(※2) |
150,000 5,000 |
- 商品交換時は、交換損益が計上される。
(※1)交換原価の計算
2,000,000円 ÷ 4BTC × 0.3BTC = 150,000円
(※2)交換益(=所得)の計算
155,000円 – 150,000円 = 5,000円
(4)仮想通貨同士の交換
- 11/2 上記4BTCのうち、1BTCで、他の仮想通貨15,000リップル(以下XRP)を購入した。
- 交換時のリップル時価は、40円/1XRP(15,000XRP = 600,000円)である。
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮想通貨(資産・XRP) | 600,000 | 仮想通貨(資産・BTC)(※1) 仮想通貨売却益(※2) |
500,000 100,000 |
(※1)交換原価の計算
2,000,000円 ÷ 4BTC × 1BTC = 500,000円
(※2)交換益(=所得)の計算
600,000円 – 500,000円 = 100,000円
(5)追加購入時の取得価額(BTC単価)
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮想通貨(資産・BTC) | 1,600,000 | 現金 | 1,600,000 |
- 購入時は、購入金額(手数料含む)で資産計上する。
ただし、今回のように、コインを追加取得する場合は、仮想通貨1単位あたりの「日本円単価」を算定しておかなければ、売却原価の算定ができません。ここでは、単価計算の方法として、「移動平均法」で計算します。
(税務上の法定評価方法は、法人税上は「移動平均法」、所得税上は「総平均法」となります。総平均法での単価算定は、下記3をご参照ください)
(BTCの動きまとめ)
日付 | 増減数量(BTC) | 残高(BTC) | 円/BTC (移動平均単価) |
概要 | |
---|---|---|---|---|---|
3/9 | 取得(1回目) | +4 | 4 | 500,000 | (※1) |
5/20 | 売却 | △0.2 | 3.8 | 500,000 | |
9/28 | 商品と交換 | △0.3 | 3.5 | 500,000 | |
11/2 | 仮想通貨同士の交換 | △1 | 2.5 | 500,000 | |
11/30 | 追加取得(2回目) | +2 | 4.5 | 633,334 | (※2) |
(※1)2,000,000円 ÷ 4BTC = 500,000円
追加取得がない限り、売却等の際に利用する単価は、1回目取得単価で変更なし。
(※2)追加購入1,600,000円(2BTC)があるため、単価計算が必要となります。
① 追加購入前(11月29日時点)の、BTC残高の日本円換算金額
500,000円 / BTC × 2.5BTC(追加購入前BTC単価(1回目取得単価) × 11/29 BTC残高 = 1,250,000円
② 追加購入後の、1BTCあたり日本円単価
(1,250,000円 + 1,600,000円)÷(2.5BTC + 2BTC) = 633,334円/BTC ⇒円未満切上
(6)追加購入後の売却
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 1,600,000 | 仮想通貨(資産・BTC)(※1) 仮想通貨売却益(※2) |
1,266,668 333,332 |
(※1)売却原価の計算
633,334円 × 2BTC = 1,266,668円
(※2)売却益(=所得)の計算
1,600,000円 – 1,266,668円 = 333,332円
3.総平均法で計算した場合
先ほどの例をもとに、所得税上の法定評価方法である「総平均法」で単価計算した場合は、以下となります。
⇒(年間取得日本円)÷(年間取得BTC数量)
⇒総平均法の場合は、単価600,000円/1BTCで、売却等の売上原価は、統一的に計算
4.会計処理について(ご参考)
なお、会計処理については、「資金決済法に仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」という基準が出ています。
この基準では、活発な市場が存在する場合は、「市場価額」で評価、活発な市場が存在しない場合は、「取得原価」で評価します。
ただし、当面の取扱いですので、現段階では、参考程度の情報となります。
5.参照URL
(仮想通貨に関する所得の計算方法)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf#search=%27%E4%BB%AE%E6%83%B3%E9%80%9A%E8%B2%A8%E8%A8%88%E7%AE%97%E6%96%B9%E6%B3%95++%E5%9B%BD%E7%A8%8E%E5%BA%81%27
(資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い)
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2018/2018-0314.html
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