No169.有償増資の会計・税務処理/申告書の記載
「有償増資」の代表例は、「通常の新株発行」になりますね。
今回は、「通常の新株発行」を例に、「有償増資」の会計・税務処理/申告書の記載についてまとめます。
(「株主割当」、「第三者割当」、「公募」いずれの方法も、会計処理に違いはありません)。
1. 会計処理
① 資本金組入額
会計上(=会社法上)は、増資した際に「資本金」や「資本準備金」に計上する金額が決められています。
以下の通りです。
原則 | 払込金額全額を資本金の額とする(会社法445Ⅰ) |
---|---|
例外 | 払込金額の2分の1までを「資本準備金」とすることができる(会社法445Ⅱ、Ⅲ)。 |
② 仕訳の計上時期
決定機関で定めた「払込期日」に計上します。
2. 税務処理
① 税務上の取扱い
税務上は、単に「株主等から出資を受けた金額」が「資本金等の額」と取扱われます。
したがって、会計上、「資本金」「資本準備金」どちらに計上したとしても、「株主等から出資を受けた額」である点は同じですので、両者とも「資本金等の額」の増加として取り扱われます。
② 申告書の記載
「資本金等の額」の増加は、確定申告書上は、別表5「資本金等の額の明細書」に記載します。
③ 均等割への影響
税務上「資本金等の額」が増加した場合、「法人住民税均等割」に影響がある点に注意しましょう。
なお、会計処理上、増資額のうち一部を「資本準備金」に計上した場合でも、税務上は、資本金と資本準備金で「違いはありません」ので、全額資本金として計上した場合と比べて「法人住民税均等割」の金額が安くなることはありません。
3. 例題
- クレア社は、株主総会で、「第三者割当による新株発行」を決議した。
- 新株発行株式数100株、払込金額50,000円/株
- 払込期日4月1日
- 増加資本金 会社法規定の最低額
(1) 会計処理
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
払込期日 | 預金 | 5,000,000 | 資本金 資本準備金 |
2,500,000 2,500,000 |
- 会計上は、「資本金」及び「資本準備金」を増加させる処理となります。
会社法上、払込額の半分までは「資本準備金」への計上が認められます。
(厳密には、実際払込時の勘定科目は「新株式申込証拠金」となりますが、ここでは省略)
(2) 税務処理
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
払込期日 | 預金 | 5,000,000 | 資本金等の額 | 5,000,000 |
- 税務上は、資本金、資本準備金どちらであっても「資本金等の額」の増加となります。
(3) 申告調整(税務修正仕訳)
ありません。
(4) 別表の記載
① 別表4の記載
記載はありません(会計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありません)。
② 別表5の記載
資本金等の額の明細書
区分 | 期首 | 当期中の増減 | 差引 | |
---|---|---|---|---|
減 | 増 | |||
資本金 | 2,500,000 | 2,500,000 | ||
資本準備金 | 2,500,000 | 2,500,000 | ||
差引合計額 | 5,000,000 |
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4. Youtube
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